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ジャズ・シンガーのmiwanのレビュー・感想・評価

ジャズ・シンガー(1927年製作の映画)
3.8
「バビロン」の劇中でも、”初めてのトーキー作品”として登場した作品。しかし、ほとんどは無声のままで、歌を歌うシーンとほんの少しの会話シーンに音声があるのみだ。それでも、歌に音声があることは作品に新たな命が吹きこまれたということに等しい。

ユダヤ人の少年ジェイキー・ラーヴィノヴィッツは、ユダヤ教司祭長で賛美歌の先唱役でもある厳格な父を持ち、自身も先唱役を継ぐことが定められていた。しかしある日、酒場で俗的な歌を歌っていたのを父に見つかり勘当されてしまう。
数年後(と言ってもジェイキーはかなり年をとっている)、彼はジャック・ロビンという名前で、ジャズシンガーとなり人気を博していた。そして、売れっ子舞台女優のメアリーと親しくなり、彼女の口添えでブロードウェイの大舞台に出演できることになる。
時を同じくして、ジェイキーの父親が病に倒れ危篤状態となる。ユダヤ教の贖罪の日に、先唱役として祭壇に立てない父親の代わりにジェイキーに先唱役になってもらうべく、母親はジェイキーの仕事場を訪ねる。しかし、その日はちょうどラーヴィノヴィッツの初舞台の日であった。

ジェイキーがナイトクラブで歌声を披露した後に発する「お楽しみはこれからだ」というセリフはあまりにも有名だ。ただ、ほとんどが無声なのでセリフやナレーションはインタータイトルを読むことになる。そこでは無意識に登場人物の声色や抑揚などを作り上げてしまうので、実際に音声が入ってくると違和感を覚えてしまったりもする。

それでも、観ていくうちにだんだんと感情移入していき、特にジェイキーと母親、ジェイキーと父親の関係にはありきたりの設定ではあったとしても心を打たれる。

「バビロン」でジャズトランペット奏者の「炭」?を使った印象的なシーンが、ジェイキーの舞台のシーンと重なる。今の時代ではあり得ないけど。
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