マリアがひたすらかっこよかった。
冒頭の爆撃下の戸籍登記所での結婚式で、命を懸けてまで婚姻届にサインをしていたことが象徴するように、マリアは「結婚」という形式にひたすら忠実であった。
美貌と才能を持ち、自分の魅力を最大限に生かす術も知っているし、持っている武器は惜しまずに使う。それでもなお、目の前にいない夫との妻であり続けようとする。
そして、そんなマリアに愛想を尽かすわけでもなく、ヘルマンもまた妻の夫であり続けようとする。
社会で成功することと、結婚生活は、今でこそ共存可能なことになりつつあるけれど、この作品の時代ではどちらかを選択せざるを得なかったであろう。
だからこそ、マリアの成り上がり方と結婚に対する意識のアンバランスさを感じるし、アンバランスながらも綱渡り的に成立させているようにも思える。
最後のラジオから流れるサッカーの実況とマリアとヘルマンとオズワルトの関係とマリアの心境ががリンクしているようにも思えた。
冒頭から繋がるようなラストは悲しく、あっけなく、不謹慎だけどかっこいい。