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エスパー魔美 星空のダンシングドールのKKMXのレビュー・感想・評価

4.5
 エスパー魔美は小学生時代のフェイバリットアニメでした。実は原恵一がシリーズの総監督をしており、藤子F先生の原作以上のオリジナルストーリーをブチ込んで来るので、めちゃくちゃ面白かったのです。子どもが観るには地味でしたが、地味で繊細なストーリーが好きだったキッズKKMXにとってツボだったのです。
 1話完結スタイルであるため、クオリティに波はありましたが、基本的に高品質だったと思います。原恵一はその後クレしん映画でブレイクし、現在は停滞中です。

 本作はそんなエスパー魔美の劇場版。ドラちゃん映画のサブで上映されていたと思います。40分なのでテレビ版のちょっと豪華になったバージョンでした。


 エスパーである魔美ちゃんは、ひょんなことから人形劇の劇団『こけし座』と知り合います。
(エスパー魔美の『ひょんなこと』とは、魔美ちゃんが非常ベルをキャッチすることであり、その説明はメンドいので気になる方は『エスパー魔美・非常ベル』でググって💓)
 同じ時期にひょんなことから知り合った、母親を半年前に亡くした女の子をこけし座の皆さんと一緒に元気づけた魔美ちゃん。しかし、こけし座は時代遅れで資金繰りが厳しく、難しい状況に追い込まれていた。そして…というストーリー。

 本作はエスパー魔美によくある、悲しみや挫折を乗り越えていくハートウォーミングな物語でした。クライマックスのシーンは桜の木の下が舞台となり、映像的にもたいへん美しかったです。このクライマックスは、物語的にはベタながらも非常に心に刺さりました。
 短い尺ながら、過不足ない展開で満足度の高い一本となっています。さすが、その後ブレイクする名匠・原恵一です。彼の手堅い技と彼特有の青臭い熱さが光りました。


 一方で、原恵一がその後停滞し、ポスト駿レースで周回遅れになっている現状がどことなく伝わる内容でもありました。原恵一は人間の善性や強さを過大評価しているきらいがあり、やや押し付けがましいように感じるのです。健康的すぎるというか。
 母を半年前に亡くした女の子に観せる人形劇が、『お母さんはいなくてもパパはいる』というテーマなんですよ。確かにエモかったけど、結構リスキーな内容だと感じました。これはヘタしたらトラウマを再燃させかねませんぜ。
 この危ういエピソードをためらいなく『正しい!』というノリでガツンとエモく打ち出してしまうので、グッときつつも「ちょっとなぁ〜」と思ってしまうのです。エンディングも正直ご都合主義だし。


 もしかすると、原恵一は大一番でコテコテにしすぎてしまう傾向があるのかもしれません。本作はクライマックスの美しさで持ってった感ありますが、物語の丁寧度では、テレビ版の傑作群には劣ると感じます。例えば、魔美ちゃんが恋人を失った女子大生に寄り添うという超能力関係ねぇだろ的な傑作回『センチメンタルテレパシー』や、藤子F原作からすでに傑作ながらも、さらに好演出で大傑作に昇華させた『サマードッグ』らに比べると、やや甘口なんですよ。キャッチーにしようとして、臭くなってしまい、リアルから遠ざかる。しかも原恵一の臭みは善性の押し付け(魔美ちゃんの性格とパラレル)なので、鼻白んでしまいます。説教臭くなりやすい。
 クレしん以外での原恵一の代表作『カラフル』はなかなか良かったものの、どことなくベタで臭みを感じ、良作ながらも傑作とは思えなかったんですよね。

 原恵一にはぜひ『センチメンタルテレパシー』みたいな、実に静謐で、繊細なアート風のガーエーを作って欲しいです。


 とは言え、この思い出の作品を劇場で鑑賞できたことが個人的にはスペシャルな体験でした。
なので、本作の⭐️は思い出補修で0.5カサ増しです☔️


*ちなみに本作も優😽部にありました。なんでもあるねぇ。エスパー魔美のTV版もかなりアップされており、『センチメンタルテレパシー』も視聴できます。しかし『サマードッグ』はなかった。個人的には『サマードッグ』こそがベストオブエスパー魔美なので、ちょっと残念。
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