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ROLLING STONE ブライアン・ジョーンズの生と死のKKMXのレビュー・感想・評価

3.5
 ストーンズの創始者でありながらバンドを追放され、復活を遂げられないままどん底で負け犬として死んでしまった悲惨な男・ブライアンの人生と死の真相に迫るドキュメンタリー。ブライアンの死は殺人だ、という説は根強く、その説から劇映画も作られたほど。本作の後半はガッツリのブライアン殺人説の検証に充てられておりました。自分は関心が無いのでそっちは特に感想無いですが、ブライアンの人柄を、彼を知る人たちが語る前半部はそれなりに楽しめました。


 ブライアンはカリスマ性があり、ナイスガイ的な側面もあるものの、皆さん口を揃えて語るのはブライアンの不安定さと冷酷さでした。ブライアンは気分の波が激しく、ある人は双極性障害だったのでは、と語るほど。それ以上にブライアンの冷たさは結構印象に残り、カネ出してくれている関係者に「お前はカネだけ出せばいい」と言って寒い中ほったらかしにしたエピソードは、これは人として終わってるな、という印象。あと、非嫡出子が6人もいて、全員ジュリアンと名付けようとしたとか、狂ってますね。子どもへの愛情とかゼロなのでは?死ぬ2年前くらいには恋人アニタにも去られて完全に孤立していたとのことで、ブライアンという人は他者と関係を築くことができないタイプだったんだろうとよくわかりましたね。

 ストーンズでの勢力争いは、グリマーと共同生活をしていた結成当初からあったそうです。このドキュメンタリーを観る限り、ブライアンがグリマーに敗れるのは火を見るより明らか。この人がリーダーとして振る舞うには、ブライアン以外は代用品のバンドでなければ不可能で、同じメンバーで続けるバンドのリーダーはほぼ100%無理でしょう。しかもポップソングが書けないので、グリマーに追い落とされるのは当然の帰結だと思いました。
 しかも、晩年になるまで自分がリーダーだと思い込んでいたのも哀れ。警察のスパイに「ストーンズのリーダーはドラッグやりまくりだぜ」と愚かにも自慢したら(本当に愚か)、警察は「ミック・ジャガーがヤクをやってる」と勘違いし、ミックを逮捕するというオチに。このエピソードは惨めにも程があります。
 このようにブライアンは悲惨な人でありながらも、同情しようがないエピソードばかりで嫌われ度が高く、彼の没落についても自業自得だろ、と思わされてしまうようなところがありました。遠くから見るとカッコいいのかもしれませんが、近しい人たちから本当に嫌われていたんだろうと感じました。これだけ嫌われれば、トラブルが起きて殺されてもおかしくは無く、殺人説もそれなりの説得力はあるな、と思います。


 そんなブライアンのルーツはやはり親子関係。父親は支配的だったとのことですが、母からの愛が薄かったっぽいです。妹が早くに亡くなり、その後生まれた下の妹を母親が溺愛したため、母の愛がブライアンに向かなかったようです。これはミュージシャンになるくらい繊細な少年にとってはキツい。彼は愛を求めて彷徨い、得られないから苛立って酷い態度を取ってしまい、ますます嫌われるタイプの人だったように感じます。
 だから、ブライアンは本当の意味では優しいタイプだったのでしょうね。ただ、その優しさは持続しないというか、発揮するには不安定すぎたのでしょう。

 仲間でありライバル、キース大先生との関係性はより複雑。ナオンにフラれたキースをブライアンと彼女のアニタが慰めていて、この時はキースとの関係も少し良くなったとのこと。しかし、キース師匠はアニタを寝取り(!)ブライアンはどん底へ。ブライアンはDVとかもすごかったらしいので(アニタを殴ろうとして避けられてしまい、拳が壁に当たりギターが弾けなくなるとか結構凄まじい)、アニタもキースに流れちゃったんでしょうね。これだけヒデェ事しときながら、キースはブライアンの訃報を知ると「ついに死んだか」、死後「長く生きられないヤツもいるってことさ」って言ってるからな〜、葬式も行ってないし、ホントにキース大先生は血も涙も無い!ブライアン、優しくする相手間違ってるよ!


 ブライアンの人生を見ていると、死因は長くストーンズに居すぎた事でしょうね。65年のサティスファクション以後、居場所無かったっぽいので、とっとと脱退して自分の音楽を追求すりゃ良かったんですよ。67年にラップっぽいことやろうとしたり、モロッコの土着音楽をレコーディングしたり、先見性はハンパ無かったので、勿体ないですよね。曲もポップソングでなければ書いた可能性ありますし。グリマーの曲はダサいとか言ってないで、とっとと独立してやりたい事やりゃ良かったのに。そう考えると、やっぱりこの男、長く生きられないヤツだったんでしょう。

 そして……友だち選びも良くなかった!「ブライアンはバンド内でビルと仲良かった、いつも一緒だった」みたいな証言が!おそらく、ファンとセクロスする事に関しては意気投合していたようですが、晩年のブライアンが没落したころには、特にビルの名は出てこない。本当に仲良しならば、「ビルはブライアンを支えようとしたが、それでもダメだった」みたいな証言があってもいいはず!やはりブライアン、友だち選びもダメだったか……
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