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鬼が来た!のgenarowlandsのレビュー・感想・評価

鬼が来た!(2000年製作の映画)
5.0
クストリッツァの「アンダーグラウンド」を彷彿させる戦争の悲喜劇を描いた傑作。もの凄い熱量で日中戦争を描いている。チアン・ウェンが監督・主演。カンヌでグランプリを受賞したが、中国では上映禁止に加え、本人も出演・製作を禁じられた。戦争の不条理を描き、抗日は戦時のみで終わらせるべきという強いメッセージが含まれている。

何者かによって村のマー(チアン・ウェン)の家に置き去りにされた日本兵の花屋小三郎を香川照之が演じている。村人はその何者かが誰かわからず、「再び引き取りに来るまで生かしておけ、さもないと村人全員殺す」と脅されていたが、日本軍の拠点が直ぐ近くにあり、日本軍に見つかれば村人が疑われ殺される。花屋を生かすべきか殺すべきか村が割れる。花屋は日本兵として立派に死にたい、と死を熱望する。

花屋と共に置き去りにされた通訳が、花屋の中国人を罵る言葉を中国人への賛美に翻訳してしまう。おっとりした村人たちと過激な花屋とのやり取りがおかしい。

餓死したい花屋にご禁制の小麦粉を使って餃子を食べさせ、花屋を隠し保護すること半年、1945年の夏が近づいてきた…

鬼は何だったのか。

前日に観たドキュメンタリー「蟻の兵隊」の中で、奥村氏が中国人に詰問するシーンを思い出した。「なぜ日本軍から逃げずに処刑場の門番として戻ってきたんだ? いくらだって逃げられただろう?なぜだ?」生き残れた門番の息子は困惑する。我に返った奥村氏が「今、自分は日本軍に戻っていた」と自身の変化に驚く。

たやすく個人は集団に飲み込まれる、人間をよくよくわかっているのは中国人の方だ。だから赦すべきことと責めるべきことの区別がある。

前半コメディ後半シリアスで展開も早く、カメラワークも動きが速い。終戦間近の混乱と混沌を描いた大傑作だった。

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