あなぐらむ

若い東京の屋根の下のあなぐらむのレビュー・感想・評価

若い東京の屋根の下(1963年製作の映画)
4.0
源氏鶏太原作の山の手お嬢さん奮闘記。
BGとして働きながら、家族人として兄弟、親子の間に挟まれて大人の男女の心と態度の在り様に戸惑い、それでも誠実にぶつかって行くヒロイン小百合を、斎藤武市のリズミカルな演出が惹き立てる。浜田光夫とのツンデレ恋模様も楽しい。斎藤武市監督はほんの些細な動きでも振付をつけるという事を「東京の暴れん坊」で知ったので、カット尻などの役者の立ち位置、動きが意図を持ったものなのを確認するのも楽しかった。

女優陣がそれぞれ小津映画に登場するような配置で個性的、山岡久乃、初井言栄に小百合の恋のライバルには松尾嘉代(大学生役!)が配され豪華。
箱根、オリンピック直前の出来たての首都高にロケした横山実撮影の画は紀行映画としての趣もあり、斎藤武市らしさを感じさせる。恋路も家族関係も、重たくならずにさらりと流して娯楽映画として後味良い仕上りの作品。

主な舞台となるのは東急線の久が原周辺で、駅前の面影は今も残る。小百合ちゃんは物語中ずっと自転車に乗って、この街を駆ける。その様が映画に爽やかさをもたらしている。女優が走る、自転車に乗る映画は良い。
伊藤雄之助の驚くほど抑えた芝居は「若草物語」と対極の感。浜田光夫と吉永小百合はやはり名コンビだと思う。