臓器に宿る記憶。
悲しい能力を持つ者。
ヴァイオリニストとして活躍するシドニーは、幼いころ事故で視力を失ったが、自立して快活に生きる女性だ。
そんな彼女が、姉の勧めもあり、角膜移植手術を受ける。
手術は成功するが、視力の回復とともに「自分にしか見えないモノ」が居ることに気づく。
リハビリの医師にも必死に訴えるが、信じてもらえない。
それらが頻繁に見えるようになった彼女は、理解者もなく、不安と恐怖に苛まれる。
そして、移植した角膜に原因があると確信した彼女は、医師の協力を得てドナーの女性について調査を始めるのだった...。
ネットリと心に纏わりつくような恐怖を味わえる物語だった。
やっとモノが見えるようになったのに、普通に自分の目には見えるモノが、他人の目やカメラには映らないことに気付いた時の恐怖...。
視力に頼らず生きてきた彼女が、視力の回復とともに恐怖に晒され、誰にも頼れない状況は精神的な不安感を煽る。
だが、シドニーが心ならずも得てしまった能力が、イマイチ判然としないのが難点。
『デッドゾーン』のジョン・スミスの能力と似て非なるもので、彼のように他人に触れなくても、過去や未来の「死のビジョン」が勝手に心に流れ込んでくる。
「死者の霊」「死につつある者の魂」「霊を死地へ導く者」「運命の死」など、死にまつわる霊的なものが見えるようなのだが、分かりづらい。
また、始めはシドニーの訴えに取り合わなかったリハビリの担当医が、途中からいきなり心変わりしてシドニーに協力し始めるのも奇妙。
しかも医師免許剥奪の危険を冒してまで。シドニーを好きになったから?にしては重過ぎる選択ではないか?
そして、角膜のドナーである女性の物語に現実味が無いのが残念。
特殊な能力を持ってしまったため、田舎町で忌み嫌われ蔑まれた女性。その存在感にリアルさが感じられないのだ。
まあでも、これら「死のビジョン」が、ドナーの女性が心から訴えたい真実に彼女を導いていく展開は良い。
そして、ラスト間際の「あのシーン」は、今までのフラストレーションを払拭するかのように派手だ。
最後、シドニーは「元の生活」に戻れたようだが、それが彼女にとっては幸せだったように感じる。
んん、でももう一ひねりほしかったかな。残念。
2017/02/26