ひでやん

ダメージのひでやんのレビュー・感想・評価

ダメージ(1992年製作の映画)
3.6
息子の恋人と恋に落ち、愛欲に溺れてゆく男の悲劇を描く。

スーツをスマートに着こなすイギリス下院議員のスティーヴンは、妻と2人の子供に囲まれた順風満帆な人生を送っていたが、ある日パーティーで謎めいた女性アンナと出会い、一目で心惹かれる。

彼女は息子の恋人だった。しかし理性を抑えきれずアンナと肉体関係を結ぶ。

激しく互いに求め合い、愛欲を貪る2人。裸身を露にした大胆で官能的な描写だが、そこに🔶愛🔶が感じられない。

自らの行動を「狂気の沙汰」だ、「こんな事は初めてだ」と彼は言うが、妻や息子への罪悪感、躊躇などが感じられず、剥き出しの本能でひたすら体を求めているようだ。

別れを告げても逢瀬を重ねるスティーヴンは破滅の道へ突き進む。そうなるとアンナはファム・ファタール的存在だが、その要素が希薄で、ジュリエット・ビノシュに🔶魔性🔶という言葉が合わない気がした。

アンナの恋人は死んだ兄と瓜二つ。過去の傷が癒えぬまま兄と恋人を重ね、スティーヴンとの関係がいつかバレる事、そうなった時再び悲劇が訪れる事を知りながら逢瀬を重ねているように感じた。

ジュリエット・ビノシュのラストの表情は、男を滅ぼす魔性の女というより、自滅する憐れな女に見えた。

ジェレミー・アイアンズは好演で、彼以外にこの役は考えられないほどハマリ役だった。
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