風に立つライオン

怒りの葡萄の風に立つライオンのレビュー・感想・評価

怒りの葡萄(1940年製作の映画)
4.0
 原作はアメリカの文豪ジョン・スタインベックで本作によりピューリッツァ賞、ノーベル文学賞を獲得している。

 1940年制作、ジョン・フォード監督により西部劇タッチのヒューマンロードムービードラマになった。

 1930年代末の大干ばつとアメリカ農業の機械化によって土地を追われた貧農一家の自立、再生の物語だが、この時代のアメリカの白人でも凄まじい困窮生活をしていたのかと驚く。

 そうした資本家達の搾取の嵐に対抗していた労働ストなどの扇動活動家を用心棒を雇って排除していく様は後のレッドパージなどに繋がる種を宿していたと言っていい。

 物語の貧農一家はどちらかというとイデオロギーなど一切なく、その日の糧を得るのに必死なだけであって単に巻き込まれているだけなのだ。

 一家を率いてイニシアチブをとるヘンリー・フォンダの澄んだ目とキリっとした口元はどうしても品の良さが滲み出るが、母親役のジェーン・ダーウェルは日本で言えば東山千栄子といったところか。
 一家を愛で包みつつ一方で明日に向け逞しく歩む肝っ玉母さん役がハマり、アカデミー助演女優賞を獲得している。

 文学を見事な映像芸術に仕上げたジョン・フォードもアカデミー監督賞に輝いている。