ふたば三十郎

張込みのふたば三十郎のレビュー・感想・評価

張込み(1958年製作の映画)
3.5
R.I.P.橋本忍

偉大なる脚本家・橋本忍御大の追悼の意をこめて初鑑賞。
松本清張の原作は読んでいたが・・・あれ?
『砂の器』より面白かったんですが(笑)

松本清張×橋本忍×野村芳太郎監督と言えば、『砂の器』が名作に挙げられるが、いやいや、映画としての出来は断然こっちじゃないかと。

『砂の器』の撮影が好みじゃないってのもあるけど、張り込みや尾行シーンのカット割りやカメラワークは巧いし、何よりロケシーンが素晴らしい。

また、登場人物の描き方も原作よりいい。
つまらない主婦の人生と考えていた刑事が、張り込む内に同情し、自身の状況も鑑み、自分の人生も考え直す展開に、ベタだがぐっときてしまった。

その平凡な主婦を大女優・高峰秀子が演じているのもいい。
観る前はミスキャストと思っていたが、失礼なくらい何度も「歳より老けて見える」と言われる役を、おそらく設定上は20代だが当時30代になった高峰秀子が演じるのもぴったり。
そして、徹底して張り込み目線で彼女をアップで撮らない演出。

この映画で一番ギャラが高い女優さんをこんな風に使い、また高峰秀子もちゃんと理解しているというね、これこそがほんとの大女優。

主婦から一人の女になり、そしてまた主婦に戻るって展開に、ほんとの幸せって何だろうと感傷にふける。
☆☆☆★★