すずき

ニーチェの馬のすずきのレビュー・感想・評価

ニーチェの馬(2011年製作の映画)
3.5
19世紀末。
初老の男は、妙齢の娘と二人暮らしだった。
男は片腕が不自由だったので、身の回りの世話を娘にさせていた。
家の周りは荒涼とした野が広がるだけで、街からは離れている。
彼らは憎み合ってもいないが、楽しく笑い合うような関係でもない。
ただ互いに言葉数少なく、共に日々を食い繋いでいた。
ある暴風の日、馬が言う事を聞かなくなる。
翌日も、また翌日も馬は働かず、馬は食べる事さえやめて弱っていく。
暴風は止む気配はなく、男と娘は何とか備蓄した食糧で生きていくが、ある日井戸の水が枯れてしまう…

男と娘の6日間を描いた映画。
物語の表面的な内容は薄く、起伏も少ない。彼らの行動の一つ一つを長〜〜〜いカットで捉えた、とても冗長な作品。
退屈かと言われれば退屈だけど、荒いモノクロの雰囲気や全編に漂う退廃的な空気感に惹かれる。
眠気を感じそうな長〜〜〜くて単調なカットも、世界観の表現だから仕方ないね。

その長いカットの連続は、物語の情景を一つずつ描いた連作の絵画を見てるかのような印象を受けた。
モノクロなのも相まって、室内の光と影はレンブラントの版画みたい。

水が無くなり、光と火が無くなり、風も無くなり、音が無くなるクライマックスに衝撃を受けた。
この映画で描かれる世界は、「神は死んだ」、その後の終末へと向かう世界を描いた黙示録だったのだ。
物語の舞台は主人公の家から離れず、彼らの生活を描くに終始するが、そのスケールの広がりにびっくり。
劇中登場する、男と娘以外の登場人物は、一足先に崩壊を迎えた都市部から逃げてきた人達なのかも…、
ひょっとしたら舞台は19世紀じゃなくて、文明が退化した未来の出来事なのかも…そんな事も思ったり。

新コーナー!映画飯レシピ紹介!!
ここでは本作に出てきた料理のレシピを紹介するよ!
①ジャガイモは皮付きのまま、茹でる
②皿に盛って、塩を添える(完成)
劇中で熱々のまま手で割って食べるのが印象的。ヤケドするから冷ませや。半分くらい残してるし。