ろ

英国王のスピーチのろのレビュー・感想・評価

英国王のスピーチ(2010年製作の映画)
5.0

「運動や療法も必要だが、心の治療こそ大切だ」


私にとって大切な作品の1つ。
なぜなら今作は壁を乗り越える物語だから。


部活の役職と引継ぎが終わって少しホッとした11月。
しかし、12月はキツかった。
誰に何を強制されたとかそんなことはないのですが、家の外に出るのが億劫になって学校に行くのも辛くて、生きることに希望が持てない毎日でした。
しかし、一緒に暮らしている家族にはなかなか言い出せず。(1番肝心なことを言うのは怖くて避けてしまう、悪い癖です)

昨日この映画を観て、勇気が湧いて、辛さの根源をやっと言葉に出来た気がします。
人と関わるのが辛いこと。(仲の良い友人との関係も切ってしまいたくなる)
部活を辞めたいこと。

そして、部長に退部したいという気持ちをようやく伝えることが出来ました。少し心穏やかに年を越せそうです。年内に決断出来て本当に良かった。


自分を変えること、新しいことに挑戦することって勇気がいると思います。特に劣等感や病気を克服しようとする時。決めたのは良いものの、なかなか上手くいきません。1人では乗り越えられない壁もある。だからこそ周りの支えが重要になります。今作は当事者の心理、そして克服していく過程をとてもリアルに表現していて、何度も力をもらいました。


吃音に悩むジョージ6世。
彼は民衆の前でスピーチをしなければならない。
そんな彼は吃音を治そうと努力します。
たくさんの医者を頼って、時には口いっぱいにビー玉を詰めることも。
周囲が自分をバカにしたり、不憫に思ったり、話すことを強制してくる。そのたびに彼は悔しくて、ふがいなくて、情けなくてたまらなかっただろう。

そんな彼の前に言語療法士のライオネルが現れる。

彼の診療はとても面白い。
肩の力を抜いてリラックス。頬の筋肉をほぐす。広い部屋の床をゴロゴロと転がったり、汚い言葉を言わせる。
形式に捉われず、自由なやり方をするライオネルにジョージ6世は心を開いていく。


暖炉の前で2人がお酒を飲みながら話す。
ジョージ6世は幼い頃の記憶をたどる。
左利きやX脚を矯正されたこと。本当はプラモデルが好きなのにお父さんが許さなかったこと。そして乳母に虐待されていたこと。
徐々に彼の心の傷が明らかになっていく。

ライオネルが言います。
「あなたの父上はもういない。1シリング銅貨に顔が描かれていても気にするな。そして5歳の頃の恐れなど忘れていい。あなたは十分自分の道を生きている」

そしてジョージ6世の奥さんエリザベスも素敵。
「私がプロポーズを2度断ったのは、あなたを愛していなかったからじゃない。王族の暮らしが嫌だったの。でも思ったの。“素敵な吃音だわ。この人となら幸せになれそう”って」

ライオネルやエリザベスに見守られながら公務をこなすジョージ6世。
彼を見ながら私は思う。
私もいつか、あの戦争スピーチ(9分間)を乗り越えた後 ジョージ6世が感じた充実感や達成感を得るだろう。今はその瞬間までの準備期間だ。冬眠しているだけで、きっと春は来る。


「私には王たる“声”がある!」
ろ