えいがうるふ

グラン・トリノのえいがうるふのレビュー・感想・評価

グラン・トリノ(2008年製作の映画)
4.5
イラつくと闘犬のように牙を剥いて唸るというちょっとデフォルメが過ぎるほどの役作りで、嫌われ者の偏屈ジジイに徹するイーストウッドが美味しすぎる。まして、敢えて主人公である自分を極端なレイシストとして描くことで、ラストのカタルシスを最高に引き立てる話の積み上げ方は悔しいほど見事で、文句のつけようがない!といちゃもんを付けたくなる笑。

孤独な主人公と対照的に描かれるモン族のウザいほど善意に溢れた密なコミュニティの様子もまた非常に映画的な演出で面白かった。彼らの辿った悲しい歴史についても学ぶきっかけになった。そんな複雑な歴史を背負った環境で育ちながら、身の処し方が未だ分からずとも真人間に育ったタオ、賢く凛とした生き様のスーの姉弟がキャラクター描写が素晴らしかった。

ウォルトがホモソしぐさを教えにタオを床屋へ連れて行くシーンも印象的。アホらしいが、まさにそうした旧態依然のコミュニティでこそ居場所を確保し心の傷を隠し虚勢を張って生きて来られた父親(的存在)として、息子(的存在)が同じくそうそうは変わらない男社会で生き抜く為の処世術の基本として、真面目にそのバカバカしい振る舞いを教えようとする姿に、女も辛いけど男として生きるのも面倒くさくて辛そうだなぁ、とふと思った。