ちゃんちゃん焼き

グラン・トリノのちゃんちゃん焼きのネタバレレビュー・内容・結末

グラン・トリノ(2008年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

口の悪い頑固ジジイが初っぱなから飛ばして、最後までもっていかれるような映画。そりゃこんな映画作ってしまったらもっと作りたくなるだろう、イーストウッド。隣人とも息子とも孫とも上手くいかない主人公ウォルトが、ふとしたことから隣人であるモン族の少年タオ、姉のスーと知り合いになる。孫と同じくらい歳が違うのに、いつのまにか彼らは友人のような関係になるが、ギャングに目をつけられ、タオの家が襲撃され、スーは暴行を受ける。それから怒ったウォルトは、身辺を整理し、身支度を整え、ギャングの元へ向かう。当然ながら逆襲するとも思われたが、そうはしなかった。しかし、なぜか納得した終わり方だった。それは、秀逸な伏線が功を奏したのだと思う。神父への懺悔(と言っても肝心なことは言わないが)、床屋との何気ない会話、ガレージにしまったままの戦争の勲章、検査結果の用紙、それらは、ウォルトの罪を示しているように思えた。復讐は何も生まないということを、ウォルトは戦争でわかっていたのだ。いちばん大事にしていたグラン・トリノは、息子に渡せば改造されるだろう。このよさがわかる者に残したい、とウォルトが思ったのも納得だ。
独特なセリフ劇は、ウォルトの辛口やスーとのウィットに富んだ会話で軽妙に進む。最後にいくにつれ、まるで日本のヤクザ映画もしくはマカロニウエスタンの様相だが、武器を持っていないところがさらにこのラストを印象づけた。死によって始まり、死によって終わる、実に完成された映画だった。