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血と砂のNUZOOのレビュー・感想・評価

血と砂(1965年製作の映画)
4.3
ならず者たちを集めてチームを作り特殊作戦に向かうという独立愚連隊シリーズのルールは守りつつ、今回は名司令官とヘッポコ新米兵たちという関係を主軸に置いていて、これまで以上にコメディ寄りな印象。

しかも新米兵士たちは楽団で、戦地でニューオリンズジャズを演奏する異質さ。ニューオリンズ式の明るい葬式を戦争映画に持ち込んで、コミカルなままシリアスな死も表現しようとしている。
全体が性にまつわるギャグだらけなのも死との対比っぽい。
ラストシーンにも顕著なように、明るさを描くことで逆に悲惨さを際立たせるといった対比的な手法が効いている。陰と陽、敵と味方、老いた兵と新兵、男と女という対比も戦争のシチュエーションではより強調され面白い。
ともかく、ずっと笑いながら見ていたところで来る悲痛なクライマックスは泣かせる。

単なる悲劇でも献身でもない慰安婦のあり方を含め、この明るさで戦争映画を撮ることは、反戦映画にもプロパガンダ系の映画にももうできないだろうと思う。
明るさを使ってしか描けないだろう戦地の人間のリアリティがこの映画にはあった。

役者たちは皆よかったけど、なかでも一番のコメディリリーフの葬儀屋を演じた伊藤雄之助の演技は現代でも違和感ないほどに普遍性のある面白さだった。コメディを担う役がセンチメンタルな語りもするというのはずるいくらいハマる。
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