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エルヴィスのNUZOOのレビュー・感想・評価

エルヴィス(2022年製作の映画)
4.2
何も考えず観てるだけでいいバズ・ラーマンの装飾過多な画面が楽しい。

画面と構成のデザインがしっかりしてて情報の意味づけもはっきりしてるから観客はそれを受け取るだけでいい、というパッケージングはいかにもバズ・ラーマンの映画という感じ。遊園地の乗り物みたいな親切設計の映画体験はそれはそれで楽しい。

そしてその流れるような映画体験のなかで、オースティン・バトラーおよびエルヴィス・プレスリーの魅力が溢れていたのがよかった。オースティン・バトラーはほんとにいい顔する。

ミュージシャンとしてのエルヴィスと、それをコントロールしようとするショービズの悪魔のような大佐という対比を作り、音楽活動をショービズの闇や私生活の放蕩とは切り分けるコンセプトになっていて、そこはかなり脚色も多そうだけど映画としては面白い。
ある意味スターの栄光と破滅の紋切り型のようなエルヴィスの人生を描くにあたり、自分のような門外漢がイメージする栄枯盛衰のスターの姿より、ミュージシャンとしてのパフォーマンスの側面が見えてくるように作ってあるのはよかった。
ミュージシャンとしてのエルヴィスを印象づける、ブラックミュージックへの憧憬が描かれるシーンが特にいい。高級車で黒人たちのクラブに向かい、キラキラした目でリトル・リチャードたちの演奏を見ているシーンなど最高だった。BBキングとの交流が史実ではないらしいのはけっこうショックだけど、そのくらいいいシーンだったと思う。

過去の楽曲を流しながらその時代にない音色を投入しまくる50年代のあたりのシーンの音楽の使い方はちょっとどうなんだと思ったりもしたけど、あらゆるものをキラキラにデコレートしまくる作風なので途中からはそういうものだと飲み込むことにした。

エルヴィス・プレスリーという時代の象徴のような人が、当時の人からどのように見えていたかという視点を想像しやすくするために、エルヴィスの一人称視点にせずに大佐の視点を中心に据えたのはいい作りだったと思う。
演奏などパフォーマンスが多くてそのバリエーションもあり、意外に長さを感じなかったのもよかった。
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