こたつむり

テキサスの五人の仲間のこたつむりのレビュー・感想・評価

テキサスの五人の仲間(1965年製作の映画)
3.9
とても知的な西部劇。

ということで、銃やら馬車やらは出てきますが、それらは舞台設定として活用されているだけであり、重要なのは “ポーカー”。もうね、この“ポーカー”と言う単語がでた時点で「騙し騙されの物語だな」と予測が付いてしまって穿った視点で観てしまうんですけどね。うん。それでも、ぐいぐいと惹き込む力は半端なく。傑作です。

特にテンポが良いんですね。
丁寧に物語を描きながらも、ととととととっと澱まずに流れますからね。うーん。これって何気ないようでいて高度なテクニック。しかも、上映時間は100分を切る長さ。サクッと観れてフガッと楽しめる娯楽映画として良い按配です。

また、登場人物たちも。
褒められるような背景を持っていない人たち(例えば娘の結婚式を中座してポーカーに興じる父親…とか)ばかりなのに嫌味が無いんですな。だから、余分なところで悩む必要が無く、抵抗なく物語世界に没入することが出来るんです。賭け事に夢中になっている五人のバランスも絶妙ですし、その賭け事に飛び入り参加する主人公も良い按配です。

また、物語の方も。
目玉焼きをひっくり返す技術が秀逸であります。正直な話、気付かない間に裏面になっていますからね。なかなかの高等テクニックです。また、其処に至るまでの流れも絶妙。これは監督さんの力量というよりも、脚本の勝利でしょうかね。

でも、あえて難を言えば。
目玉焼きで大切なのは、ひっくり返す技術ではなく、焦がさずに焼くこと。ほんの少しの焦げ目はアクセントになりますが、本作は焦がし過ぎなんですね。だから、とても苦く感じるんです。これは火加減を間違えた…というよりも、調理器具の選択を誤ったんじゃないかな、と思います。

ということで。
この焦げ目の按配次第では、もっと名が知れた作品だっただろうな、なんて考えると本当に残念な話なのですが、それでも表面は上手に焼き上げていますからね。傑作であることは間違いありません。知的興奮を求める向きならば、是非とも召し上がってみてください。

…って目玉焼きの映画じゃないですよ!念のため。
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