アニマル泉

終電車のアニマル泉のレビュー・感想・評価

終電車(1980年製作の映画)
4.2
トリュフォーがナチス占領下のパリの演劇を描いた。「高さ」が主題のトリュフォーにとって劇場は上下構造、階段とおあつらえの舞台だ。地下室にはマリオン(カトリーヌ・ドヌーブ)の夫である演出家ルーカス(ハインツ・ベンネント)が潜伏している。トリュフォーは劇場の狭く、暗い空間にこだわったそうで撮影のアルメンドロスが見事に実現している。閉塞感が充満する密室の映画だ。何回か停電する。一方で、ベルナール(ジェラール・ドパルデュー)が親ナチスの批評家ダクシア(ジャン=ルイ・リシャール)をレストランの二階から階段を引きずり下ろし、土砂降りの夜の店外でズブ濡れで喧嘩するダイナミックな場面はトリュフォーらしく素晴らしい。
本作はドヌーブの映画だと思う。トリュフォーは「アメリカの夜」に続いて演劇の世界を描きたかったそうだが、劇中劇が渾然一体となって俄には劇中劇と解らない。戦時下の演劇といえばルビッチの「生きるべきか死ぬべきか」を思わずにはいられないが本作の方がシリアスだ。額縁エンドタイトルはルビッチ風だ。
アニマル泉

アニマル泉