ニトー

ブラッド・ダイヤモンドのニトーのネタバレレビュー・内容・結末

ブラッド・ダイヤモンド(2006年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

これはかなりの秀作ではなかろうか。

個人的には上手くバランスを取れていると思う。どういうバランスか。現実と理想。特定の社会構造やパワーゲームを上手く描きながら、その大流の中でもがくディカプリオ演じるジンバブエ出身の元白人傭兵のアーチャーと革命軍に襲われ家族は離散し息子は少年兵にされる黒人のソロモンという個の奮闘と勝利を絶妙なバランスで描けていると思う。

善悪どころか限りなく悪一色に近い悪(RUF-革命統一戦線)と悪(シエラレオネ政府軍)のぶつあいを誘発・利用してさらに搾取と利益を貪る資本企業(アメリカ企業)。いやーまったく白人というやつは!という国家的・企業的な大きなイデオロギーの中で個としてのアイデンティティによって行動するアーチャーとソロモンの道程は、決して表面的には感動的でも穏やかでもない(そもそもアーチャーにはソロモンのように純粋な家族愛ではなくダイヤという欲望による行動原理が主ではあるので)のですが、しかし最後まで見ると欲望だけではい、なにかもっと別の、人種を超えた(本作ではおそらく生まれ育った環境によるアイデンティティと死を悟ったことによる諦念)結びつきがあることを示してくれます。

ジャーナリストが女性であるというのも、たぶんディカプリオという「男」の欲望=リビドーを掻き立て誘引し、結果的にあのラストに持っていくためであるでしょう。そう考えれば死に瀕したアーチャーとマディーのいささか臭いかけあいも納得がいく。この辺が単純なハリウッド大作的男女のコテコテ演出とは違うところなのでしょう。
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