アニマル泉

フランケンシュタインの花嫁のアニマル泉のレビュー・感想・評価

5.0
主役ボリス・カーロフ、監督ジェームズ・ホエールによるユニバーサル怪奇映画の大ヒット作の第二弾。白黒スタンダード。
冒頭、嵐の夜、メアリー・シェリー(エルザ・ランチェスター)自ら続編を語り出す。ちなみに怪物の花嫁のクレジットタイトルは「?」だがランチェスターが二役を演じている。
「手」の映画である。怪物(ボリス・カーロフ)の登場は手からだ。ヘンリー(コリン・クライブ)が生きていたのも手がまず動く。怪物の花嫁が誕生するのもまずは手が動く。花嫁誕生は手が動いて目が見開く流れがゾクゾクする。本作では怪物が言葉を覚え、感情が生まれ、善悪を覚える。怪物の涙がその象徴なのだが感動的なのはやはり「手」だ。怪物が盲目の老人と友達になって初めて涙を流す。そして老人の背中を初めて手で触れる。ここが感動的だ。もう一度怪物が涙を流すのはラストの惨劇である。怪物が花嫁と対面する場面、ここも感動的なのは怪物が花嫁の手を触れるアップだ。怪物は第一作から手の位置が定らなかった。両手を上げて、手は宙を彷徨っていた。「手」はフランケンシュタインシリーズの重要な主題となっている。
本作では「高さ」も重要な主題となっている。冒頭、娘を亡くしたハンス(レジナルド・バーロウ)が地下水道に落ちる。そこで怪物が生き延びていた。怪物は山狩りで捕まり棒に貼り付けて縛られる。バタンと倒されて、そのまま運ばれるのが警察の地下留置場だ。頑丈な椅子に拘束されるが怪物はなんなく破壊して逃げる。プレトリアス博士(アーネスト・セシジャー)が若い女性の死体を盗もうとして隠れていた怪物と出会う地下墓場カタコンベも不気味だ。そしてクライマックスの花嫁誕生はもちろん時計塔で行われる。前作のラストで焼失したはずなのにいつの間にか再建されている時計塔は進化している。花嫁が宙吊りになるベッドの装置は複雑になって落雷と放電で生命が誕生する。本作の物語の節目が地下や階上に設定され、落下や宙吊りの垂直の運動が恐怖を煽っている。
「火」も重要な主題である。怪物は火を怖れる。第一作で村人達に山狩りで追い詰められた無数の松明、時計塔の炎上、怪物にとって火はトラウマだ。本作でも怪物は火を敏感に嫌うが盲人の老人が火を教え、怪物がタバコを吸う場面が可笑しい。本作のラストは怪物自らが大爆発を選ぶ。
ボリス・カーロフの怪物は第一作より動きが早い。表情が豊かで、話すようになり。涙を流し、相手に触るようになる。
盲人の老人とのハートフルな場面は本作の名場面である。怪物が老人が奏でる音楽に誘われて小屋を訪れるのがいい。本来、怪物はどこでも入ってくる。ゾンビみたいだ。扉が鍵かかっても壊して入ってくる。それがこの場面は音楽に誘き寄せられていくのがいい。そして目が見えない老人は喋れない怪物に「奇跡の人」みたいに言葉を教える。パンと葡萄酒を与え、神の存在を教える。そもそも怪物は第一作で間違えて凶悪犯の脳を移植されたのだった。それがこの場面で善悪を覚える。なかなか良く物語が構成されている。
プレトリアス博士の縮小人間の実験はトッド・ブラウニングの「悪魔の人形」を彷彿とさせる。
本作は大邸宅が多い、セットが大きいのも特徴だ。
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