てる

スカーフェイスのてるのレビュー・感想・評価

スカーフェイス(1983年製作の映画)
4.0
アル・パチーノが死なない作品ってないのかしら。
あっ、ゴッドファーザーは死なないか。
ギャング物、クライム作品の最後って大体死ぬよね。話の流れも大体似通っている。下っ端から始まり、薬の売買で成り上がり、豪遊し始めた辺りから怪しくなり、最後は銃で撃たれて死ぬ。この作品も例に漏れず銃殺されました。やっぱり、悪いことで富を築いた者を肯定的に描いちゃダメだもんね。それにしても、こういう人の人生って壮絶すぎる。
そんな作品群の中でもこの作品は観やすかった。わりとさらっと観れた。170分と長尺だが、長いと感じなかった。テンポが良かったのと、アル・パチーノの芝居が画を退屈にさせないからだと思う。アル・パチーノの出演している作品はどれを観ても、毎回はっとさせられる。本当にこの人の芝居は自然でいて、かつ、迫力がある。身長が高いわけでもないし、ムキムキってわけでもない。でも、力強く、迫力がある。眼が常にギラギラしていて、近づいたら撃たれそうな、そんな狂気を孕んでいる。
この作品を観て思うのは、お母さん可哀想っていうのと、真っ当な仕事をして真っ当に生きようということだ。キューバ人の恥だと息子を激しく罵るお母さん。だけど、娘には真っ当に生きてほしいと願っていた。兄の悪い影響を受けないように遠ざけたのに、まんまとそっちの方に転がっていってしまった。若いときってそういう悪いものって魅力的に見えるものね。そして、最も恐れていた凄惨な死。お母さんの気持ちを考えると、胸が張り裂けそうになる。
妹と違い、トニーの死は自業自得だ。血生臭い仕事をして、人間不信に陥り、大切な弟分をその手で殺めてしまう。きっと、あの場で殺されていなくても誰かの手によって殺されていたことだろう。生きていても、もしかしたら自殺していたかもしれない。でも、唯一彼を擁護するのであれば、罪のない親子を殺さなかった所だ。ちゃんと良心は残っているんだとわかるシーンだ。でも、その直後に自分の意に反した人物を容易に殺めてしまう。危機的状況に及んだときに、トニーは簡単に犯罪に手を染める。そうなってはもう人間社会では生きられない。もはや、まともな死に方は出来ないだろう。やはり、人の道を逸れてしまった者の行く末は破滅しかないんだなぁってつくづく思う。
非常にドラマチックで波瀾万丈な人生だ。死の国ではさぞ自慢できることだろうが、私はそれが良いとは思えない。退屈だけど、真っ当な仕事をして、天寿を全うしようと心に誓った作品でした。
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