戦争により文明が崩壊した近未来。
世界に1冊だけ残った聖書を携え、アメリカ大陸を西へ旅するイーライ(デンゼル・ワシントン)。
独裁者のカーネギー(ゲイリー・オールドマン)は、バイブルの力を借りて人民への支配をより強めるべく、部下と共にイーライに魔の手を伸ばす…。
凝ったキャメラ・ワークで長廻しのワン・カットのように見せてくれる銃撃戦なんかは新鮮だったけど、↑の粗筋のごとく、ストーリーはまあ『マッドマックス』のガソリンや水を聖書に替えただけのような、安直なもの。
ご都合主義や説明不足の所も散見し、物足りなさも残る。
ただね。本作の発するメッセージみたいなものは支持したい。
紙に書かれた書物の力を信じる…っていう一点。
スペースやスピードの効率化のために、映画も、文学も、音楽も、そしてお金までもが、配信や電子の世界に押し込められていく現代。
『ブレードランナー2049』の”大停電”みたいな事態が起きれば、すべてが無になってしまう。
それだったら、多少は面倒だったり、無駄だと思われても、いろんな媒体で、手にとれる物体としても文化や文明は残していった方がいいのではないか。
最近、アナログ・レコードやカセット・テープの良さが見直されているのも、そんな”揺れ戻し”の一種だと思う。
ニンゲンまでもが”データのひとつ”になっちゃう前に、手ざわりとか温もりとかの大事さも覚えておきたい。留めておきたい。
街からどんどん消えている書店やレコード・ショップも何とか生き残ってほしいなあ。
文明がホントに崩壊しちゃうのはやっぱりつらい。