滝和也

トゥモロー・ワールドの滝和也のレビュー・感想・評価

トゥモロー・ワールド(2006年製作の映画)
3.8
長回しと移動撮影の
匠。リアルな荒廃した
未来像と微かな希望。

ある日、一人の子供も生まれなくなった近未来。倫理観のタガは外れ荒廃の一途を辿る世界。大英帝国もその中にあった。崩壊を防ぐためなのか移民の禁止、不法移民の暴力的排除がなされ、反政府テロ、宗教的テロの恐怖が渦巻く世界に、一筋の希望が…。クライブ・オーエン演じるセオは元妻により、希望の守護者となり、争いに巻き込まれて行く…。

随所に挿入される長回しと移動撮影による緊迫感に圧倒される。特にラスト近くのそれは緊張感をより伝える最大の効果をもたらしている。

また子孫を残せず、種の滅亡へとジワリと進み、崩壊に進みし世界観のリアルさ。序盤の襲撃シーン(ここも長回しだ…)のリアルさ、怖さはゾンビか!と思える醜さ。また少しづつだが、現実がそれに進んでいる怖さ。日本の少子化は既に経済に暗い影を落とし始めているではないか。人口が減少する社会に未来はない…。内需が不足し、外需に頼るが、人手不足は深刻になる。またブラック企業を産み疲弊するため品質は落ち、国際競争力が落ち外需に頼れなくなる悪循環…。そして反政府テロ、宗教的テロが…。

この映画でやはり、感動して(T_T)してしまったのは、希望、まるで神が降臨したかのように、ある存在が見えた時、激しい戦闘が止まる瞬間である。
その存在こそ、世界を繋ぐ唯一の希望であり、世の中を平和にする存在なのかもしれない。

この作品の題名が全てを物語る。原題は「人類の子供」である…。


映画としてかなり良く出来ているし、傑作。だが、好みではない…。全体を覆う影、憂鬱感はかなりだし、ジュリアン・ムーアの出番が…(T_T)それに重いから…。
滝和也

滝和也