イチロヲ

MAY -メイ-のイチロヲのレビュー・感想・評価

MAY -メイ-(2002年製作の映画)
4.0
男性の人体部位に執着している女性が、理想的な手をもつ青年と親睦を深め、恋愛成就を目指そうとする。エキセントリックな女性が倒錯状態に陥っていく様子を描いている、サイコ・スリラー。

動物病院に勤務する主人公メイは、視力が弱くて、人付き合いが苦手で、ゴシック趣味で、裁縫が上手で、日本名を幸薄子という。いわゆる、本能と自我のシーソーゲームが根幹となっており、正常な自分と異常な自分が、主人公の脳内で闘いを繰り広げていく。

主人公の「偏った愛情」が爆発する瞬間のカタルシスが強大であり、「倒錯(感情の昂ぶりにより、非道徳的な行動を起こすこと)」を題材にしたドラマの醍醐味が、純度100%の状態で凝縮されている。

「誰しもが深層心理に異常性を秘めている」ということを念頭に置きながら鑑賞して、自分への戒めとするのが最良。監督自身は「ダリオ・アルジェントへのオマージュ」と語っているが、日本人の感性では谷崎潤一郎、江戸川乱歩を想起させられる。
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