KouheiNakamura

上意討ち 拝領妻始末のKouheiNakamuraのレビュー・感想・評価

上意討ち 拝領妻始末(1967年製作の映画)
4.0
あえて言おう、儂は愚図だッ!


「切腹」、「怪談」などで知られる小林正樹監督による武士道残酷物語。三船敏郎、加藤剛、大塚道子、司葉子、仲代達矢ら豪華キャストが華を添える…。

いつからだろう、時代劇映画がすっかり影を潜めてしまったのは。往年の時代劇映画に出演していたスター俳優たちはほとんど鬼籍に入り、所作や言葉遣いは軽視され、気がつけば時代劇特有の様式美は現代ではほとんど見ることができなくなってしまった。今では時代劇は古臭いものとみなされ、無理やり現代風に改変した軽さしかない半分現代劇のような時代劇が蔓延っている。その原因は色々とあるが、僕たちのような若い世代が時代劇を古臭くてつまらないものだと思ってしまっていることが大きいように思う。時代劇は年寄りが見るもの。そんな思い込みは取り払わらなければいけない。この「上意討ち 拝領妻始末」を観て、改めてそう感じた。

この作品はどの場面を見ても、静謐な緊張感に満ちている。それは小林正樹監督特有のグラフィカルでシンメトリーを意識した画面構成や、芸達者な役者陣の迫力、重厚な音楽によって作られている。
物語は武家社会の虚飾に切り込んだシリアスかつダークなものだが、意外なほどに笑える場面も多い。特に大塚道子演じる鬼嫁関連の場面は怖すぎて笑えてきてしまう。三船敏郎の肩の力の抜けた演技もいい。

そして何と言っても三船敏郎と仲代達矢の一騎打ち!まるで西部劇のような静寂に包まれた立会いからの、鮮やかな剣の応酬。冒頭から示唆されていた二人の剣豪の対峙にワクワクが止まらない。昔の映画館ならば客席から声が飛んでいたのだろうなあ…。「いよっ!待ってました!」
一対一の死闘から、一対多数の斬り合いになる流れも見事。ラストの鬼気迫る三船敏郎の表情も凄まじく、面白い映画を観た満足感で胸がいっぱいに。

そう、時代劇は面白いんだ。これからも、声を上げていこう。そしてまた時代劇が隆盛することを信じよう。僭越ながら、そんなことを思った次第です。
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