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男たちの大和/YAMATOのようのレビュー・感想・評価

男たちの大和/YAMATO(2005年製作の映画)
3.0
戦後60周年記念作品。
そういや観てないなということで鑑賞。


音楽が久石譲さん。
久石譲さん音楽の実写戦争ものというと、ドラマ版『坂の上の雲』がある(日清日露戦争だけどね)。
そっちのほうは先に鑑賞していて、たまに似たフレーズが出てきたりするものだから「ああ、久石さんっぽい」となった。
渡哲也さんも出てくると、余計に『坂の上の雲』を思い出しちゃう。


現代の女性がかつての大和乗組員だった男と大和が沈んでいる場所まで行くという導入。
現代パートを挟みながら当時を見せていくという形は『タイタニック』を意識したのかな。
子役時代の池松壮亮さん、あどけない。

総じて、群像劇のように、各戦闘員たちのドラマを見せていくのが中心。
艦上から一旦陸に戻るパートでは、各登場人物をしっかり見せていくので、やや丁寧にやりすぎな気はする。
というより、編集テンポの問題かな。割とオーソドックスなエピソードと見せ方があるだけだし。

クライマックスでは、大和が撃沈されるまでの戦闘シーン。
ここは血飛沫と水飛沫が混じる、なかなかの悲惨さ。
さすがに『プライベートライアン』ほどのグロさはないけど、日本側がとことんやられていく。
ここは映像としての見応えはあった。


今の基準で観たときに気にかかる箇所はいくつか。

まず、長嶋一茂さんのとこ。
一茂さんが演じる上官の台詞が全く理解できない。
下士官が上官に「この作戦は死にに行くようなもので、われわれが死んだところで意味がない」ってクレームつけて揉めるシーン。一茂さんが宥める(「その後に生きる人のための死だ」的なことを言ってた)のだけど、その発言に「え、どんな理屈?」ってなる。
しかも、彼のことを割といい事言ったふうに見せてるので、そこが引っかかる。
「死ニ方用意」と書くような人でしょ。

大和と共に滅びゆく男たちを美しく見せてるってほどでもないにしても、そこを否定もしてないってバランスでクライマックスまで行く。
そこもなんか乗れないなあと思った。
終盤、やっと「生き残ることの意義」描写があるので、なんとかなった。
戦争もので〈あなたのお陰で生き残れました〉って、そこも『プライベートライアン』的ではあるけどね。
余貴美子さんのとこ、この映画でここがいちばんよかったぐらい。

あと、やっぱこの戦争における日本の加害性にはいっさい触れてないね。
フィリピンなどの諸国を占領したことをナレーションで触れてるだけ。
負けたって結果、しかも原爆を落とされたからこそ、被害性を描くのは当然とも言えるけど、戦争なんだからそこに加害性もあるんだけどなあ。

ちなみに、ドラマ版『坂の上の雲』では、原作以上に加害性描写があったり、主人公が明らかにPTSDぽくなってる描写があったりしている。
全くアプローチが違う『この世界の片隅に』ですら、主人公にチラッと加害性を語らせてる。

公開当時に観てたら以上のようなことを考えなかったと思いますけどね。


ドイツによる『西部戦線異状なし』みたいにとことん「戦争ってアホくさっ」って映画を観てる今、この作品が今の鑑賞に耐えうるかどうかっていうと物足りないかな。
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