きざにいちゃん

シン・レッド・ラインのきざにいちゃんのレビュー・感想・評価

シン・レッド・ライン(1998年製作の映画)
3.2
この作品もテレビドラマ『パシフィック』もそうだが、ガダルカナル戦に対する日米の受け止め方の大きな違いを改めて感じた。日本人にとってガダルカナルのイメージは、激戦よりも非道な戦争犯罪の方が遥かに強い。日本陸軍首脳部の無謀で馬鹿げた過ちの為に、戦闘による死者を大きく上回る数の餓死者、病死者を出してしまった「餓島」と呼ばれた悲劇の島、過ちの島のイメージである。一方で、アメリカにとってのガダルカナルは、太平洋戦争での初めての実戦陸上戦でもあり、この戦争で初めて惨たらしく沢山の命が失われていくのを目の当たりにしたショッキングな戦争現場だ。ゆえに、アメリカ目線で作られたこの作品は、「ガダルカナル」は、さほどは大きな意味を持たない。普遍的な反戦映画であるとも言える。勿論、それ自体は意義深いことではあるが、この映画に描かれていないからこそかえって考えてしまうのは、「それ以前の悲惨さ」である。
国の為、愛する家族や恋人の為、友の為に戦って命を失うことは、語弊を恐れずに言えば、例え酷たらしく身体を引きちぎられ、激痛と死の恐怖の中で死んでいったとしても、最低限の尊厳と救いはあるかもしれない。しかし、馬鹿げた作戦の為に、戦いではなく、飢えや風土病によって自身の身体に巣食う蛆虫を払う力も失われ、生き地獄の中で犬死にしてゆく日本の兵士の無念さというのは如何ほどであったろう。せめて自分達もアメリカ人のように死にたかった、と感じてしまうのではなかったかと想像してしまう。
ともあれ、普遍的な反戦映画としては価値のある映画だとは思うが、いかんせん、冗長としているのと、心理描写を哲学的なモノローグで語る、というのは個人的には耐え難いものがあった。