シネマの流星

座頭市物語のシネマの流星のレビュー・感想・評価

座頭市物語(1962年製作の映画)
5.0
座頭市は「月」である。闇夜で、おたねを優しく見守る光。

三隈研次は時代劇×ヤクザという2本の刀を重ねることで、至高の映画を生み出した。

呼吸の乱れ《聴覚》で平手の病を察する座頭市、右肩の筋肉《視覚》で座頭市の執念と力量を察する平手。

《感覚》という刀を交わすだけで時代劇は成立する。

ヤクザの戦争の渦に巻き込まれるなかで、平手は病魔に殺されるより、市の刀で供養されることを選ぶ。その心意気に応える市もまた、平手の血と宿命を背負った刀を小坊主に供養してもらう。

これは「意志」と「生まれ直し」を描いた映画である。

最後のセリフ「どうせろくな奴じゃねえだろ」も、過去を斬り捨てて、新たな人生を始める道標。

街道で待つおたねを捨て、なぜ市は獣道を登るのか? それは、おたねの幸せを願う愛と、決まりきった人生を歩むのではなく、これからも何度も生まれ変わりたいという座頭市の願いが込められている。
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