シネマの流星

ソナチネのシネマの流星のレビュー・感想・評価

ソナチネ(1993年製作の映画)
5.0
山下清の絵画のような、ツギハギのシーンをペタペタと貼った切り絵。

ヤクザの有給休暇。自由にバイオレンスするが、上下関係や掟の束縛は厳しい。そんな連中がしがらみの巣窟を飛び出し、真っ白と真っ青な石垣島に浪漫飛行。童心に戻る。プロフェッショナルであるほど幼児。

銃撃戦や砂浜の相撲。重力がない。リアリティがない。この映画はこの世を描いておらず、天国の風景を描いた。石垣島に行ってみたい。

現代でもない。武士性に溢れた映画。彼らは生きるために個人の感情抜きで人を殺す。プロの人殺し。プロの暴力団。ナワバリや名声や富を得るためでなく、ただ成り行きと団結によって組織される。ヤクザというよりは武士の集団。最後も切腹で終わる。切腹することで天国から現実世界に行く。死ぬことで生を取り戻す。

武士性を突き詰めていくと、幼児性と異国性に出逢う。普通の映画は人物がいて風景を背景にするが、ソナチネでは風景があって人物が背景になっている。この捻転が緩急を生んでいる。

好きになれない映画なのに好きな映画。
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