ギルド

奇跡のギルドのレビュー・感想・評価

奇跡(1954年製作の映画)
4.9
【人を想う信心は宗教を超越する】
自らをキリストと信じる青年が彼の家族に起きた悲劇に向き合うヒューマンドラマ映画。

大傑作でした。
この映画を見終わった時に涙が止まらなくなりましたが、それは出来事そのものよりは出来事に至るまでの「人の営み」に言葉では形容し難い美しさが大きいと実感しています。

ドライヤー作品「裁かるるジャンヌ」「怒りの日」で描かれた宗教の難しさ、都合の良い多面的なところを「奇跡」でも踏襲している。
けれども「奇跡」が過去2作と異なるのはストーリーテリングや編集などの映画の骨格だと想う。

宗教の思想間、宗教と現実社会などの対立構造が描かれているが興味深いのはそれを地続き上に描いて一方向に交錯する姿を描いている所だと思う。
長回しが多い中で様々な軋轢が存在し、それによる親の心子知らず感だとかマウント取り合戦な姿を描いているのが編集でハッキリ強調していて面白かったです。
そういったくだりを通じて、宗教や人の営みを通じた「軋轢による分断」を描いている。
けれども本作が見事だと思ったのはそのストーリーテリングに対して文字通り「奇跡」のような回答を明示する終盤だと思う。

宗教の思想で争った自分自身の行動を悔やみ、過ちを認めて律する姿に「人間らしさ」が存在し、それが何層にも積む姿に感動しました。それが「奇跡」の構成する要素かもしれないが、ここをストレートに描いた所が素晴らしかったです。

この映画は分断されたものが再びまとまる…という姿を見せているけど、そこに対する「人の営み」の美しさや映画ならではの超常現象を通じたカタルシスの強度が凄い。
そういった主題を通じて、宗教の信心を超えた人を想う信心に美しさにこそ本作の途轍もない魅力が詰まっていると感じました。
凄く良い映画でした。

信心を取り戻し、分断された人々が再び一つになり、時が再び回り始めるラストの美しさが今でも忘れられない。脳裏に焼き付く素晴らしいシーンに感涙しました。
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