LalaーMukuーMerry

夏の遊びのLalaーMukuーMerryのレビュー・感想・評価

夏の遊び(1951年製作の映画)
4.3
大切な人を突然亡くした悲しみに失われた13年。スウェーデンのバレニーナ、マリー(=マイブリット・ニルソン)の恋のお話。ときおり挿入されるバレエの練習シーンが新鮮で、恋する若い二人が眩しすぎました。
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古い日記を手渡され「明日までに読んで」と言われた彼。翌日の公演初日、舞台横の二人。トゥシューズがつま先立ちになっていくアップの描写。これだけで全てをわからせるラストの見事な演出。これがベルイマンか!恥ずかしながらイングマール・ベルイマン作品の初鑑賞。
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日記というものは、その時の気持ちや考えをありのままに書いて自分で納得するもの。目的はいろいろ、自分を誉めるため、夢を忘れないため、反省するため、気持ちを見つめるため、記録を残すため・・・、妄想、悪口、なんでもあり。基本的に他人に読んでもらうことを考えないで書くものだから、第三者が読んでも、書き手の気分は汲み取りにくいし、思考のジャンプについていけないし、共感できることは少ないのではなかろうか? (私自身、ちょっと前に書いた思考のメモ書きのようなものを読み返すと全く意味不明で、過去の自分は他人と思え、と悟った経験があります。)
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マリーが手渡したヘンリックの日記には、あの夏休み、ヘンリックのマリーに対する思いがストレートに書かれていたに違いない。どんなにわかりにくい他人の日記でも、その部分だけはわかるはず。振り付けの先生に嫉妬していた彼の誤解を解くにはこの日記が一番。なぜ彼女が沈んでいるのかもこれを読めばわかる。
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マリーにとっても、ヘンリックの思い出にいつまでも沈んでいては前に進めない。心の整理、過去との決別(忘れること)は必要なのだ。そういうメッセージなんだなと理解しました。
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氷河で削られた丸い岩の水辺、鏡のような湖面、森に囲まれた小島の風景。一家に一つの小島ってどんな世界だ?! ロケ地はどこ? 地図で探すとストックホルムのすぐ西に無数の小島が散らばった複雑な形の湖(バルト海と繋がっているようにも見えるから汽水湖?)がある。メーラレン湖。ここだ、ここに違いない! 行ってみたい風景でした。
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ここから蛇足。冷静にストーリーを振り返ると・・・
・ヘンリックよ、もっとKYしなきゃ(空気を読むではなく、危険予知の方)。あんなことで命をおとすなんて・・・。日記に変なこと書いてなくてよかったね(希望的推測ですけど)
・マリーの伯父さん、あんたはキモイ。マリーとの会話といい、なんでヘンリックの日記を赤の他人のあんたが着服する? そんな権利あるんか? とはいえ、日記をメリーに送ったのは正解なのかも? いえいえ、だったらすぐに渡すべきでしょ。