滝和也

伊賀忍法帖の滝和也のレビュー・感想・評価

伊賀忍法帖(1982年製作の映画)
3.4
柳生影の軍団
参上!(笑)

真田広之、千葉真一の
師弟コンビが贈る
角川文庫、山田風太郎原作

「伊賀忍法帖」

戦国の世、三好家の筆頭家老、松永弾正は主君の細君、右京太夫を欲していた。それを知る稀代の幻術士果心居士は五人の妖術僧を遣わした…。右京太夫の心を奪う妖薬を作るため、奴らは彼女の双子の妹、篝火を襲う。将来を誓った篝火を奪われた伊賀忍者丈太郎は決死の覚悟で戦いを挑む!

魔界転生を始め、エンターテイメントに徹した摩訶不思議な時代劇を世に送り出した山田風太郎の傑作を80年代話題をさらい続けた角川映画が映像化。この時代話題となる大作(出来の良し悪しは別として)は角川からでしたからね。魔界転生や野生の証明、金田一シリーズ、アニメでは幻魔大戦、カムイの剣etc. etc…その中でも角川三姉妹と言われた薬師丸ひろ子、原田知世、そして今作がデビューの渡辺典子の作品群も時代を彩りました。

魔界転生と同じく千葉真一率いるJACが協力。お弟子さんの今やハリウッドスターでもある真田広之が主演。ダイナミックなアクション、スタントを展開します。

ただ…元々山田風太郎の作品は荒唐無稽、エロスとアクションが融合した、怪しげな化物との対決と言うのが基本線だけに、トンデモ作品になる訳で。エンターテイメント好きな方にしかオススメはしません(笑) 私みたいな(^^) 山田風太郎の原作は若かりし頃、ほぼ読んでます(笑)

デビュー作である渡辺典子にエロスを任せる訳にはいかないため、脚本段階で色々と仕掛けが講じられてます。故に渡辺典子は3役を演じますし、エロス担当に美保純、風祭ゆきが抜擢されてます。美保純は日活ロマンポルノで注目された時期ですね。美しいですよ(^^)渡辺典子よりは演技できますし…(笑)

千葉真一先生が美味しい所を掻っ攫っていくのはご愛嬌ですね(^^) 十兵衛ではないですが柳生役ですからね。しかも扮装は影の軍団ですから(笑)

山田風太郎原作の敵は特殊能力を持つ異形の者で、魅力的なんですが、この作品は配役がマッチしています。成田三樹夫大先生が演じる果心居士は飄々たる不気味さがありますし、妖術僧たちも中々。死者を蘇生させる薙刀使いに福本清三、時代劇の先生お願いします!と言ったら当第一の斬られ役のこの方しかいません。口から吐く液で息をできなくする化物に佐藤蛾次郎、巨漢にストロング小林こと金剛。更に盲目の針使いに一つ目タイタン役でお馴染みの浜田晃さん(^^) そしてお色気担当兼ブーメラン鎌の風祭ゆきと化物揃い(笑)

それを超える存在感の松永弾正役に中尾彬(笑)大仰な芝居は得意なんですよね。アウトレイジビヨンドではそれが嫌われて早めに殺されましたが(笑)

ただ!配役は抜群なんだけど演出や脚本が如何せん活かしきれてない…。戦闘シーンの演出や編集が余りに下手なんで、わかりにくいし、雑なんです。折角妖術僧を絞って五人にしたのに、何か雑。脚本もドタバタしてるし、ラストは時間がなくなったかの様に中途半端(魔界転生もそうなんだけど…)。役者の頑張りに監督らスタッフがついて行けてない…。特撮もこの時代の限界を感じますからね…。

特撮で唯一凄いのは中盤の燃え落ちる東大寺です。すごい金かかってる…。恐らくかなりデカイサイズのセットとミニチュアを本気で燃やしてるので、ここは迫力ありますよ〜。

でも…ストーリーで書いた心を奪う薬は劇中で惚れ薬(笑)と呼ばれてまして…。惚れ薬の争奪みたいになるって…笑えません?いい大人たちが生死をかけて戦うって…。ある意味山田風太郎らしいんだけど(^^) 化物対忍者と言う日本が誇る内容です(笑) ハリウッドの技術で真面目にリメイクしないかな…。外人さんに受けそうだし(笑)
滝和也

滝和也