ふしみあい

ブルーベルベットのふしみあいのレビュー・感想・評価

ブルーベルベット(1986年製作の映画)
4.0
真っ白な柵に真っ赤なバラ。明るく健全な50sのアメリカのイメージのすぐ裏側には蟲蟲蟲蟲蟲…。
一見平穏で何気無い日常の裏側には黒くて醜い、おぞましいものが満ち溢れている。そんなオープニングからこの映画、只者じゃないぞと画面から目が離せなくなった。

50年代ファッションの健全ポニーテールっ子サンディと青いシャドウに真っ赤な口紅、妖艶シンガードロシーとの対比のさせかたがうまい。サンディと距離が近づきつつも、腐った花のような危うい魅力を放つドロシーにはまってしまうその演出にドギマギした。クローゼットに隠れるあの脆さとか緊張感はすごい…。

そして言うまでもなくデニス・ホッパーの怪演!まじで気持ちの悪い変態おじさん!それに対する田舎町の純朴童貞青年カイル・マクラクラン。父性の象徴でもあるフランクを、小鳥が甲虫を食べるように、倒し取り込む。デヴィッド・リンチの変態性というか自分の体験など、監督自身の感情を容赦無く画面にさらしているのがすごく伝わってくる。そしてそれこそがこの映画をカルトたらしめているところだと思う。

青いベルベットに対するドロシーの暗く暖かい子宮のような赤い部屋、首元までボタンをきっちり閉めたジェフリー、黒い甲虫のようなテカったジャケットを着るフランク。美術が色々なメタファーになっていて面白かった。
音楽というか音の表現もノイズを使ったり、イザベラロッセリーニのブルーベルベットの歌いかただったり、聴覚的にも印象的だった…。ブルーベルベットのフレーズはずっと頭で流れてしまう。

リンチ作品見たの2作目だけどデューンとは全然違うかった。イレイザーヘッドが早く見たいです。