LalaーMukuーMerry

オフサイド・ガールズのLalaーMukuーMerryのレビュー・感想・評価

オフサイド・ガールズ(2006年製作の映画)
3.9
このイラン映画は、ワールドカップドイツ大会(2006)のアジア最終予選、これに勝てばワールドカップ出場決定という、イランにとっての大一番、しかも地元開催、イランvsバーレーン戦が行われるスタジアムに行ってどうしても試合を見たかった女性たちのドキュメンタリー風観戦記。
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イラン女性の人権は低く抑えられているから、女性はサッカー観戦をすることができない(スタジアムに女性トイレもない)。だから彼女たちは男の格好をして群衆に紛れてスタジアムに入ろうとするのだが、警察もさるもの、入場ゲートの身体チェックであえなく捕まって、スタジアム2Fの外側につくられた囲いの中にいれられてしまう。同じような女性たちが数人集まった。
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キックオフ、大歓声! でも試合は観れない。なんとか脱出しようとするがダメ。試合が見えるところにいた警官に、実況してくれと頼む。引き受けてくれたものわかりの良い(別の意味では不真面目な)警官。ゴール! 輪になってはしゃぐ彼女たち。ハーフタイム。
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後半キックオフ、残り時間あと少しという所で、観客が出て来る前に刑務所にマイクロバスで移動。ラジオをつけてとせがむ彼女たち。それにこたえる警官。放送でわかったイランの勝利! バスの外には熱狂した群衆たちが湧き出て来る。バスに一緒にいたチンピラ風の兄ちゃんは、逮捕されたはずなのに明るくて、彼女たちに小さな花火をくれたナイスガイ。
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全篇にわたってBGMは全くないし、かなり暗めの雰囲気、サッカーシーンゼロで期待外れ感は否めないものの、なんだかユーモラスなシーンとか、ちょっといい話が挟まれたりして、別の意味で良い作品に出会えました。
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12年前の作品だが、今でもイランの女性はサッカー観戦ができないのだろうか? 法を破る女性たちをこんなに肯定的に描く映画がつくられるということ自体が、イラン当局は大目に見ているという証拠だ。イランでも女性の社会進出は経済発展のために必要だから、サッカー観戦程度はOKにしたいのが本音だけれどイスラムの教えが邪魔している、ということなのかもしれない。
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と思ったら、この作品はイラン国内では上映禁止、監督(ジャファール・パナヒ)は2010年に自宅監禁されているから、筋金入りの反体制の人でした。だとすると、これは価値ある作品ですね。
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もう一つ、今年のロシアワールドカップ大会、イランvsスペイン戦は、この作品の舞台となったスタジアムでパブリック・ビューイングが行われ、初めて女性がサッカー観戦できるようになったそうです。