しぇんみん

トータル・リコールのしぇんみんのレビュー・感想・評価

トータル・リコール(1990年製作の映画)
3.9
本当の意味ですべての記憶を取り戻す(=完全想起)とは?

"火星の青い空"は本物なのか?

近未来、植民地として開発の進む火星。

そこはエネルギー採掘と空気を牛耳る、コーヘイゲン長官が支配する地だ。

だが、謎の指導者クワトー率いる不満分子たちによる暴動の増加に、彼は頭を悩ませていた。

一方地球では、旅行の仮想記憶を売るリコール社のサービスが人気を博していた。

建設現場の労働者として働くダグラス・クエイド。

彼は愛する妻と普通の生活を送る平凡な男だが、行ったことのないはずの火星の地の夢を頻繁に見るようになっていた。

仮想記憶の危険性も耳に入るが、彼は意を決してリコール社を訪れ、火星への旅の記憶を購入しようとする。

だが装置の準備中にエラーが発生、秘密裏に記憶の一部を消され、意識が朦朧としたまま自宅に戻されるクエイド。

そして、自宅に戻ると彼を取り巻く環境が一変しており、同僚はおろか愛する妻にまで命を狙われることとなる。

この謎の元凶を突き止めるべく、クエイドは火星へむかうこととなるが…。

SFサスペンスアクション風味の「自分探しの旅」。

頭に埋め込まれた発信器を鼻の穴から無理やり取り出すシーンや、大柄な女性の顔面が割れるシーン、気圧の低い火星の地表で目が飛び出すシーンなど、本作はビジュアル面で記憶に残る印象的なものが多い。

そのなかでも白眉なのは、火星の強力な放射線の影響でミュータント化した人間の造詣だ。

程よいグロさ加減の見た目の彼らではあるが、そのキャラクターを善人よりに描くことで、嫌悪感を抱かせない演出のさじ加減が絶妙。

また、物語面でも、虚実程よく取り混ぜその境目を曖昧にし、今観ているものが現実なのか虚構なのか良く分からない演出になっているところが秀逸。

主演の肉体派シュワルツェネッガーも、他の作品と違い常人寄りに描かれており、謎を深めるエッセンスになっている。

物語のラスト、その映像は「ホワイトアウト」して終了するが、この演出をどう取るかによっても、虚実の意味が変わるだろう。

とにかく一見の価値ある作品だと思う。

ハナマル!

2021/10/02
しぇんみん

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