優しいアロエ

チャイニーズ・ブッキーを殺した男の優しいアロエのレビュー・感想・評価

4.5
〈『アンカット・ダイヤモンド』の原液〉

 ジョン・カサヴェテスの面白さが少しだけ分かった気がする。この監督は俗物的で自滅的な人間を描くことが多く、映像スタイルも粗くムラがあるのが特徴だ。ゆえに彼の作品は、登場人物にも作風にも慣れるまで時間がかかる。しかし一度慣れれば、そのギトッとした語り口が転落スレスレの人物たちに愛着を湧かせるものとなってくるのだ。

 さて、そんなカサヴェテスを2010年代に追いかける監督コンビがいる。サフディ兄弟だ。彼らもまたニューヨークを根城にするインディペンデント系の作家であり、「The Criterion Collection」のインタビューでは、オールタイムベストの第2位にカサヴェテスの作品を5本も同率で挙げるほどのカサヴェテス狂いとして知られている。
(https://www.criterion.com/current/top-10-lists/238-josh-and-benny-safdie-s-top-10)

 なかでも本作『チャイニーズ・ブッキーを殺した男』は、俗な世界のオーナーが何やら大きな陰謀に取り囲まれて夜の街を奔走するあたり、サフディ兄弟の『アンカット・ダイヤモンド』を思わせる。(ただし、舞台はL.A.とNYで異なる)

 また、『アンカット・ダイヤモンド』の主人公は宝石商であったが、本作は小さなストリップクラブの経営者である。そして、その場の欲望に身を任せた結果、マフィアの仕掛けた罠にまんまと嵌り、犯罪へと手を染めていく“巻き込まれ型”のフィルムノワールとなっている。

 ストーリーの流れが雑然としているのは本作の魅力なのでよいのだが、流石に状況が掴めないところも多かった。前半のほうがノれた。
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