KouheiNakamura

赤ちゃん泥棒のKouheiNakamuraのレビュー・感想・評価

赤ちゃん泥棒(1987年製作の映画)
4.3
幸せについて本気出して考えてみた。


コーエン兄弟の監督2作目。ニコラス・ケイジ演じるコンビニ泥棒の常習犯ハイ。彼は幸運にも元警官のエドという女性と結婚する。幸せな2人だったが、子宝に恵まれることがないと医者に宣告される。それならば、よその家から赤ちゃんをもらってしまおうと考えるハイだったが…。

コーエン兄弟が往年のスラップスティック・コメディにオマージュを捧げた一本。テンポ良く進みながらも、時折見せるシュールさはコーエン兄弟作品ならでは。ジョン・グッドマンなどコーエン兄弟作品の常連も強い個性を発揮する。
…とここまでなら普通に良くできたコメディ映画なのだが、コーエン兄弟は更にここに一味加えてくる。それは、幸せとは何か?という普遍的な問いかけだ。赤ちゃんが物語の中心にいるが、焦点が当てられるのはむしろ赤ちゃんに関わる大人たちの方。主人公夫婦は彼らの愛の結晶としての赤ちゃんを望むが、それは叶わない。脱獄した2人組は赤ちゃんを通して自らの本質を悟り、元いた場所へ帰る。

主人公夫婦は最初に望んでいた幸せを手にすることは出来なかった。それでも、幸せの形は一つではない。映画のラストで主人公が垣間見るのはそんな幸せの可能性の一つ。
そのエンディングにそれまでニヤニヤしながら観ていた僕は不意を突かれ、思わず涙するところでした。

大好きな映画です。おすすめします。
KouheiNakamura

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