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おおかみこどもの雨と雪のNMのネタバレレビュー・内容・結末

おおかみこどもの雨と雪(2012年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

学生の花が初めて付き合った人は狼男の最後の末裔だった。
愛し合うようになり程なく結婚、子ども二人を自宅出産した。
しかしその頃彼は事故死してしまった。

妊娠も出産も夫の死も誰にも相談できなかった。
狼の血を引く子どもたちをどうやって育てるべきか一人で悩んだ。
注意しても子どもたちはふとした時に突然狼に変身してしまうので、なるべくバレないように三人で山奥に引っ越した。

やがて母は仕事を見つけ、子どもたちは学校にも通うように。

あるとき姉の雪は転校生に、犬のニオイがする、と言われ、頭に血がのぼり半狼になって相手に怪我をさせてしまう。
相手の子ソウヘイはまさか雪が変身したとは思わず、あの時突然狼がやってきてやったと思い込んでいた。

ソウヘイに悪気はなく、むしろ落ち込んだまま欠席続きの雪を心配してプリントや給食を届けてくれた。
雪はお陰でまた通学できるようになった。

弟の雨はもともと学校を休みがち。それ自体は母も周囲も特に咎めない。
一人でどこに行っているのかと思ったら、近くの山の主である狐に師事を仰いで森のことを色々教わっていた。
雨は狼に変身し、獲物の捕まえ方などを習う。

雨は雪も行こう誘うが、雪は「行くわけない 人間だから」と断る。雨は「狼だろ」と大喧嘩に。
二人ともそれぞれの道を選び始めていた。
母は望んでいたことながら何やら不安を覚える。

雨は、師匠の狐が怪我で瀕死になっているので死後は自分がその代わりを務めなければと考えていた。
母は止めたが決意は固く、嵐のなか出ていってしまった。
母はずぶ濡れになりながら山の中を一晩中探し回る。
崖から転げ落ち気絶していたところを、雨が抱えて麓まで運んだ。意識を取り戻した母はお願い行かないでと懇願した。
雨は一度だけ振り返り、そのまま山の上まで駆け登っていってしまう。
しかし朝日とともに立派に遠吠えをしている声を聞いて、母は見送ることを決めた。

一方雪は嵐で学校から帰れず、母の迎えを待っていた。
同じく迎えの来なかったソウヘイと二人だけで隠れて学校に泊まることに。
ソウヘイは、再婚した母親にいらない子と言われていると告白。
雪は私もソウヘイみたいに本当のことを言っても笑っていられる強さが欲しいと感じ、あの時傷つけたのは私だと狼の姿を見せた。
するとソウヘイは、知ってた、誰にも言ってないし言わないからもう泣くなと語る。
雪は受け入れられた喜びで涙を流した。

雪は中学へ上がり家を出た。
母は今も静かに山のそばの家で暮らす。
山からは時々遠吠えが聞こえた。


狼要素を抜きにしても一人の女性の生き方として面白いストーリー。
学生結婚した女性が一人で出産し子育てする大変さが感じられた。現実世界にも様々な事情でこういう選択をした女性たちがいるはず。
一度も検査を受けずに出産を迎えることも、誰にも助けを借りず初産を乗り切ることも奇跡的なことで、誰しもこれができるとはもちろん限らない。
引っ越し資金としばらく子どもたちと食べていける貯金があったこと、その後の農業も親切なご近所さんに助けられながら成功したこと、運良く仕事を見つけられたことの全てが奇跡的。現実でこう上手く行く可能性は決して高くないだろう。

雨君を見送る過程も面白い。花は子どもを愛し人生を賭して様々に尽くしてきたので、その分手放したくなくなっても仕方ないところ。しかしすぐ子どもを信じるほうに切り替えて子どもに執着しなかったところが偉い。
雪ちゃんの、自分を受け入れてくれる人を見つけるシーンも感動的。父もこんな経験を花からもらったのだろう。
ソウヘイ君の強さと正義感も爽快。雪ちゃんをよろしく。
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