よしまる

間諜最後の日のよしまるのレビュー・感想・評価

間諜最後の日(1936年製作の映画)
3.2
 月イチでお届けしておりますヒッチコックレビューのお時間です。

 「間諜」。聞き慣れない言葉ですが「スパイ」です。

 原題「シークレットエージェント」。
 83年前にこのタイトルで公開してたらカッコよかったんじゃないだろうか?今じゃありふれたB級アクションか、一昔前ならVシネマ的だけれど、当時カタカナタイトルが無かったわけじゃないのにね。
 一周回って現代に「間諜最後の日」なんて逆に新鮮かもと思いつつも、この#マンスリーヒッチコックっていう企画をしなければたぶん触手は伸びなかっただろうなぁ。

 「三十九夜」に続いてヒッチコック作品登場のマデリーンキャロル。昔のイギリスの女優さんらしく気品に溢れ、凛とした美女ぶりが頼もしい。
 主役のジョンギールグッドはなんとこれがデビュー作。史実物で有名なレジェンド俳優にもやはり、最初があるんだなと感慨深かった。

 ストーリーは特に複雑さもなく、敵のスパイを探っているうちに、主人公の男女がイイ感じになって、スパイなんてヤーメタ!っなんて割と淡々と話が進む。
 周囲に巻き込まれたり、自らを追い込んでいったりして話が転がり続けるはずのヒッチコック作品にしては薄味で、しかもなぜかコメディへの振り幅は大きい。なので、ハードボイルドなものを期待するとそこは大きく外れて、どちらかと言うとロマコメといった雰囲気の映画だった。

 それもまた娯楽としては正解なのだけれどね、なにしろ戦前だし、今見ても新鮮な演出は随所に見受けられる。そしてなんと言ってもラストの20分くらいの畳み掛けは相変わらず素晴らしい。

 実はこの企画を始めたとき、ヒッチコックは駄作も多いと聞いていたので少々躊躇いもあったのだけれど、今のところは杞憂に終わっている。