む

蜘蛛巣城のむのレビュー・感想・評価

蜘蛛巣城(1957年製作の映画)
4.0
黒澤明監督作品2作目の鑑賞。
矢を射られる有名なシーンをやっと観れた!発狂する表情や声がマジもんだという驚き、それでも演技を通す三船敏郎とカメラを平然と回す黒澤監督。狂ってる(褒め言葉)


ストーリーのウェイトは後半(それも特にラスト10分)に振り切られていて、なんともおどろおどろしい雰囲気が増していく。

最初の霧の中に城が現れるシーンを観て、「今から迷い込むんだな」と心の準備はしてみるが、あっという間に呑み込まれてしまう。
最後には、また城跡のカットで終わるというストーリー作りの几帳面さはとても気持ちよいが、悪夢から覚めたことで複雑な気持ちだった。
妻の気が狂う所なんかは、お化けよりも怖い。日本独特の怖さを感じる。なんだか、夏の夜に観ると眠れなくなりそうだ。


何のために城主になっているのか、わけがわからなくなっている武時の虚しさと愚かさ。城に籠り外界と遮断され、信じるのは家来よりも変な老婆と嫁の声のみ。
まさに蜘蛛の巣にかかってしまった虫みたいだった。

セリフは聞き取れない事が多いが、それでも三船敏郎を観るだけでテンションは上がるし、不気味な中にある力強さや生々しさが掴みかかってくる映画でした。
む