よしまる

グラン・プリのよしまるのレビュー・感想・評価

グラン・プリ(1966年製作の映画)
4.0
 マフラーの中に現れるタイトル。スパークプラグ、キャブレター、レンチ、スパナ、まだF1マシンが機械仕掛けだった頃、リチウムイオンの電動ドリルもなかった時代、こんなものが公道を270キロでかっ飛んでいたロマン。モンタージュで次々と切り替わる、ソールバス監修によるタイトルバックだけは何度でも見返せる。

 4人の架空のドライバーが、綺羅星の如くプロのF1パイロットに混じって激戦を繰り広げるカーアクション映画の金字塔「グランプリ」は、当時のF1レースを克明に描き出した傑作だ。

 三船敏郎を本田宗一郎に見立てたコンストラクターの戦いもリアルで、フィクションと分かっていながらレース展開にはめちゃくちゃ燃えるし、今年公開された「フォードvsフェラーリ」のキャロルシェルビーがオブザーバーで参加しており、かのGT40の車載カメラで撮影されたレース映像は出色の出来。3時間の長丁場ながら、途中のトイレ休憩も用意されているので安心して堪能できる。

 こういうところに安っぽい恋愛要素をぶち込むなと言いたくなる映画もよくあることだけれども、本作に限っては4人の主人公にまつわる色恋沙汰も、取ってつけた感はなく、人間ドラマとしてもまったく邪魔にはならない。
 特にフランスのアイドルシンガー、フランソワーズアルディの可愛さは筆舌に尽くしがたい。おっと、これは個人的趣味ですごめんなさいw

 コンピュータ制御のオートマ車となった現在のF1マシンのシルエットももちろん美しい。さらに進んでピコピコとカーソルが動き空中にディスプレイが浮かんじゃったりするような近未来のSFもそれはそれで楽しい。けれども一周回って、手作りの機械仕掛けのマシンの色気も、いまの若い方の心には新鮮で魅力的なものに映るのではないだろうか。