滝和也

モロッコの滝和也のレビュー・感想・評価

モロッコ(1930年製作の映画)
4.0
熱砂の恋

異郷、モロッコの
砂漠に静かに
燃え上がる愛。

究極の女優映画であり
後世に影響を与えた
恋愛映画の名作。

「モロッコ」

2000マーク突破記念第七弾に選んだのはマレーネ・ディートリッヒ、ゲイリー・クーパー主演、ジョセフ・フォン・スタンバーグ監督の恋愛映画の古典です。日本でのトーキー第一作としても有名です。

モロッコ、外人部隊が駐屯する混沌の異郷。その街にアミー(マレーネ)は流れ着いた。ナイトクラブで歌う彼女は熱い視線を送る一人の外人部隊兵士トム(クーパー)に花を渡す。部屋の鍵と共に。二人は出会いから恋に落ちていたが素直になれず、やがてトムは前線送りになる…。

正にマレーネ・ディートリッヒの女優としての魅力を詰め込んだ映画。クールかつミステリアス、そして秘めた熱情。100万ドルの脚線美を持つセクシーさとクールな美貌。その演技、容姿の相対するギャップの魅力。そして異郷の熱さとクールでありながらロマンティシズム溢れる恋愛の対比が何とも素晴らしく、究極の名場面と呼ばれたラストシーンに活かされています。(ラストはネタバレで最下段)

スタンバーグ監督はディートリッヒに惚れ込み何作もコンビを組んでいますが、こちらが最高傑作でしょう。常に彼女を美しく撮るんだと言う気概が見えます。彼女の表情の変化、一挙手一投足、そして心のうちまでフィルムに焼き付けている様に感じます。ラストシーンの余韻の素晴らしさ、ルージュの伝言、すれ違う二人の描写と後世恋愛映画、ドラマに与えた影響も大きく名作に相応しいシーンの連続で飽きさせません。

ディートリッヒの演技も素晴らしく、クールでありながら、秘めた熱き思いを持つ女性の心の揺れを丹念に表現しているので目を離せなくなります。

相手役のゲイリー・クーパーはまだデビューしたての頃ですが、ディートリッヒの相手役に相応しい二枚目ぶり。その高身長なスマートさが活かされてますね。額に手をやる挨拶ポーズ(敬礼含め)がダンディかつ可愛らしさを感じます。

また異国情緒溢れた撮影、音楽も素晴らしくい。光の強い、陰影が強い撮影はその乾いた暑さを強調。異郷の街をトムを探し走るディートリッヒを追う移動撮影も素晴らしかったです。音楽も土着の曲や外人部隊の行進曲が耳に残ります。更にマレーネ…ディートリッヒのセクシーな歌声とトーキー映画(スーパーインポーズが付き、音が付いた作品)の第一作として正に相応しい作品でした。

30年ぶりにこちら見たのですが、その感動は変わらず、やはり名作は色褪せないと感じました。この作品を見てマレーネ・ディートリッヒ、ゲイリー・クーパーが好きになったのを思い出しました(^^)

以下ネタバレです。




やはりこのラストシーンは素晴らしいですね。出陣して行く外人部隊。愛するアミーへの気持ちを残し行かざる得ないトム。さよならと言わざる得ない二人。固定カメラで門を抜け砂漠に向かう部隊。そして門で躊躇うアミー。シルエットになるアミーの撮影が素晴らしい。そして全てを捨て、熱砂の砂漠で裸足になり、部隊を追うアミー。そこまでまるで種火だった熱情が爆発し溢れ出る瞬間でありながら、静かにエンドマークがでる、その素晴らしい余韻と言ったら…正に傑作に名高いラストシーンです。これは是非オススメしたいですね。
滝和也

滝和也