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リリイ・シュシュのすべてのHKのレビュー・感想・評価

リリイ・シュシュのすべて(2001年製作の映画)
3.8
「スワロウテイル」「ピクニック」などの岩井俊二監督によるインターネットの書き込みサイトでの小説を原作とした青春映画。キャストは市原隼人、忍成修吾、蒼井優などなど

中学1年生の男の子が、同学年のどこか大人びた雰囲気を帯びた男の子と友達になる。しかし、夏休みに沖縄旅行に行ったのち2学期になって彼は豹変する。苛めっ子となり彼をぱしりに使うようになった。彼はリリィシュシュという歌手のファンでファンサイトを運営しており、そこでとある人間と交流するのだが…

思春期というもっとも不安定な時期をテーマとして、いじめ、窃盗、売春、強姦など、反社会的な行為に陥ってしまう中学生の日常とリリィシュシュを巡っての切ない事件を織り交ぜながら淡く物語る。

映画内では、とある掲示板を舞台にキーボードにカタカタと打ち込まれる要素をタイプオブグラフィックで見せる演出を見せる。森田芳光監督による(ハル)をうまく引用している。

全体的にも、カメラを移動させぐらぐらさせたり、沖縄旅行のチャプターでは手持ちカメラでPOVのような撮影をしたり、定点撮影においても水平方向ではなく、弱化斜めにした不均衡な構図で撮るため、思春期独特の不安的な気持ちと日本の学校社会独特の陰湿さを見事に表している。

映画内においては、キタノブルーといっても過言じゃないほどに青い背景をよく取り入れたり、または光の反射をうまく取り入れて田園風景などを幻想的に取り入れるなどエヴァンゲリオンの影響を受けた撮影方法もふんだんに取り入れている。

これだけオマージュを掲げながらも、幻想的なやり方で見せているのは素晴らしいと思う。

虐めの描写は初めて見た時にはかなりえぐいと感じたし、忍成君のあのどこかませた大人びた雰囲気の男の子があんな陰湿ないじめをするところはとても良かったと思うが、最近みた「父の秘密」に比べるとちょっとダメージが低い。

あくまで個人的な感想ではあるが、中学生時代1年生まで仲良かった友達が、2年生になって急に豹変して苛めっ子になって虐められたことがあるため、その変わり方にはどこか臨場感を覚える。

岩井俊二さんらしいスタイルで見事に映画を作られていてとても良かったと思います。ただ個人的には強姦シーンなどのところはちょっとばかり幻想的にしすぎて、あまり迫力がなかったかな。そこがこの人の売りかもしれないけど。

しかし、市原隼人この頃の面影がほとんど残ってないなおい。この純朴そうな雰囲気が後年ルーキーズとか出るころにはほとんどなくなっちゃうのが惜しい。
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