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死神の谷/死滅の谷の河のレビュー・感想・評価

死神の谷/死滅の谷(1921年製作の映画)
3.8
英語wikiによるとブニュエルはこの映画見て映画監督になろうと決めたらしく、『アルダルシアの犬』の首以外埋められた姿はここから来てるらしい。
恋人の死を受け入れられない女性がいて、神に遣わされていて、死をもたらす自身の役割に労働のように疲れ果てている死神がいる。愛は死に打ち勝つと信じている女性に対して、死神は尽きつつある3つの命の1つでも救えればその恋人を生き返らせる契約をする。
それによって女性は様々な場所に生まれ変わり、その救わないといけない命は恋人の生まれ変わりになっている。それに対して恋人に死をもたらすものとして死神がいて、その死を指示する人として権力者がいる。その権力者はメインパートで死神が仕えている神に対応する。
主人公の女性が恋人の死を受容する話が筋になっている一方で、この時期のドイツ映画に共通する、裏で世界を操る存在がいるっていう現実か妄想かわからない陰謀論がこの映画にもあり、この映画ではその存在が神や妄想でのその具現化としての権力者となっていて、この映画自体が主人公の妄想のようになっている。また、そのメインパートで死神が使える神を置き換える存在、冒険パートでの権力者に対応する存在として街を牛耳る人々がいて、恋人の死の理由にその人達が噛んでいるような感覚もある。
墓の周りや城壁などの高い壁、長い蝋燭など、最近だとヴィルヌーヴの『DUNE』であったような縦長のセットや構図、画面を絞ったり窓など何か額になるものを前におくことによって縁取られた画面が特徴的に思った。それによって一枚絵としてかなりかっこいいショットが多い。平面的な画面は表現主義の特徴のような感じがするけど、その中でも相当作り込まれているように感じた。
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