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クラムのskkのレビュー・感想・評価

クラム(1994年製作の映画)
4.1
アメリカのアンダーグラウンドコミックの第一人者であるロバート・クラムとその家族に関するドキュメンタリー
最初にpresented by David Lynchって出てきて驚いた

ロバートの事を名前もろくに知らない(なんかこういうタッチの絵見たことあるな、というレベル)状態で見に行ったんですが、レイシズム・ミソジニーもむき出しのままの露悪的な漫画を描くロバートのパーソナリティーや性癖(強くて体格の良い女の人が好き?)の形成過程がはっきりと見えて興味深かった
いじめを受けてずっと引きこもる兄、痴漢を繰り返す弟、厳格で暴力的な父親、薬でおかしくなった母という強烈な家庭で過ごす中で、漫画を描くことで何とか社会に出れたのがロバートなんだろうな、という気がする
それでも、強迫観念に囚われるかのように漫画を描き続け、ミソジニーと相反するような鬱屈した欲望を抱える様を見ると、表向き飄々としつつも本当は結構ギリギリのバランスなんじゃないか?と思わなくもない

「あなたの漫画を子供の時見ていて、怖いと思った」とインタビューで言われて、「ありのままの現実は残酷なものだからな」と返して「弁解はしない」と付け加える部分がとても心に残っている
このやり取り見てて、私は割と性悪な映画・漫画とかを読むのも好きな人だが、現実なんて所詮その程度なのだ、という心象が心の底にあるのかもしれんな、という点に思い当たった
最後に出てくる「なんて最悪に輝いているんだ!」という発言も印象的 こういうセリフで決して社会的に褒められたものではないものも面白がる精神的余裕ってのは持っておきたいな、と思います

本当にパーソナルなドキュメンタリーで、最初の方はちょっと退屈かもな…と思っていたのですが、ロバート含めたクラム家の人々の内面を見事に捉えることに成功していて、かなり興味深いドキュメンタリーでした

最後のテロップには驚きました… あと妹2人が撮影拒否した理由が少し気になる 妹2人、写真には出てくるけどほとんど登場しなかったもんな
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