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白い牛のバラッドのskkのネタバレレビュー・内容・結末

白い牛のバラッド(2020年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

冤罪サスペンスってアオリもちょっぴりミスリードな感じもするが…
死刑執行数第2位のイランを舞台として死刑制度と冤罪を描いた作品
冒頭に出てくる刑務所のような無機質な場所で立ち尽くす白い牛、という絵が宗教画のようではっとさせられた

主人公ミナの夫が死刑になるも、後にそれが冤罪だと判明し…という前置きがあった上で、冤罪で夫が犠牲になった側/冤罪にしてしまった側がそれぞれ描かれる
主人公側の辛さや悲しみはさることながら、判事の後悔の念もしっかり描かれていてやるせない
その過程がある上で、親切な友人の正体をミナが知った後の決断は衝撃的 判事側の苦悩も見せられてそちらにも少し感情移入してしまったところもあるし、赦して和解するラストをちょっと想像してしまったが、現実はそんなもんじゃないっすね
夫を理不尽に奪われた悲しみや怒りの前には、内心での贖罪や苦悩なんて意味をもたないという、当事者にとっては当たり前の現実を叩きつけられました

イラン映画はそうそう見ることがないので、イランというイスラム教の国での生活はどのようなものであるか(バレンタインデーという概念があるのか!)という点や、そのイランにおいてシングルマザーが暮らしていくことが社会制度面でも家族関係の面でもどれほど大変なのか、というのが詳細に描写されている点でも興味深かったです

あまり動かないカメラで撮影される、湿度がなくて無機質ですらある映像が美しく、それほど舞台が変わらない中でもさほど飽きずに見れたかな
本国の表現規制をかいくぐるためか、登場人物の動作等から映像で写っていないことを語られる場面も多い 口紅をひくシーンは2回ともとても印象的だったな
白い牛、牛乳といった出てくるモチーフにも隠喩があるようなのだが、その点はイスラム教のバックグラウンドは皆無でよく理解できていなかったかも こういうメタファーが張り巡らされている作品なのだと思うので、その点もうちょっと把握できた方が楽しめるのであろう

なかなか気骨のある、色々考えさせられる作品でした 見といて良かった
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