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007 スカイフォールのしおえもんGoGoのレビュー・感想・評価

007 スカイフォール(2012年製作の映画)
4.0
スタイリッシュでクールが信条のボンドだが、ダニエル・クレイグ版は結構リアル路線で粗削りなところや、甘さを見せていたが、今作では蓄積した心身の疲労というこの上ない人間らしさを見せてくれる。

冒頭のアクションシークエンスで撃たれた後、死亡認定される程の期間をただ潜伏していたのは体を癒す以外にやっぱり精神をすり減らす日々に疲れがあったからだろう。
アルコールや薬物に溺れ、銃の腕もおぼつかないボンドを見ることになろうとは。(私はボンド作品を全て見ているわけでは無いけれど)
ガッツリやつれて見えるのは役作りで痩せたのだろうか。すごいわ。

それでもMI-6本部が狙われたと聞けば復活し、次第に調子を取り戻していく。

華麗なるアクションや、クレイグ版らしい肉弾戦、ロケのバリエーションも富んでいて見どころ満載。
娯楽超大作として50作品目にふさわしい内容だったと思う。

以下ネタバレあります。


まず何より新しいQが最高ですよ。
メガネの草食系男子風だけど皮肉屋でビッグマウスの割にまだ未熟。
「ペン型爆弾なんて古い」といういかにも今時の若者っぽい生意気さもあって、年齢層が高めの周囲の人達との良い対比になっている。

一方で007シリーズだというのに作ってくるギミックが地味なので、終盤に出てきたボンドカーの前がパカッと開いて銃が出てきた時にめっちゃ嬉しかった。これこれ!こうじゃなくちゃ!
いずれQもギミックの面白さに気付いてくれるだろうか。

また今作はスカイフォール館でボンド自身の過去に一歩踏み込んだことと、そこで手作りトラップで待ち構えるという展開も良かった。
一粒で何度も美味しい、楽しみどころが沢山ある感じ。


そして最大の驚きが、まさか…ボンドガールはMってことで良いでしょうか。
途中出てきたいかにもボンドガールは、ささっとラブシーンこなして「はい、ボンドガール的な子 出しときましたよ」とノルマだけ達成して、ささっと退場。
もう一人のボンドガール候補だったイブも早々に出なくなったかと思ったらマネーペニーだったという事でボンドガールではない。

となったら、もうMしかいないですよね。

結構衝撃。2人の間に恋愛感情はみじんもないけれど、ボンドの忠誠心や上司部下としての信頼に加えて、カジノロワイヤルの頃からオカンと息子のようだと感じていた情のようなものがボンドシリーズの中でこういう形に帰着するとは。なんか盲点だった。
皮肉なことに今回の悪役もまさにMを母親と呼び、愛憎入り混じる感情を向けていた。

これらはMにジュディ・デンチがキャスティングされたことから生まれたプロットだったと思うと、彼女の退場にふさわしいと思う。


その他
・ボンドが列車から川に落ちてからOPに入る流れがとても美しい
・復活したボンドに笑顔で平然と「ごめんねー」位の軽さで話しかけたマネーペニーの胆力がすごい。私なら気まずすぎて謝罪するのに誰かに着いてきてもらうと思う
・地味なQのガジェットだが、無線機はミニチュアのようで可愛かった
・「無線っていうんだ」の応酬が好き。そして電車を落とすやり口にびっくり
・Mのお付の男性秘書みたいな人が、サラリーマンの悲哀を感じさせて好き
・スカイフォールの番人?のおじいさんが出て来てから妙にほっこりする
・新しいMのマーロンは絶対裏切者だと思い込んでいたら意外と話の分かる人でごめんなさい
・次作からボンドと新Mはどういう関係になるのか楽しみ
・しかしほんと、Mがボンドガールとは…
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