シネマスナイパーF

007 スカイフォールのシネマスナイパーFのレビュー・感想・評価

007 スカイフォール(2012年製作の映画)
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全てを破壊されて多くを失っても残ったもの
受け取ったブルドッグはそういうことだ
これは懐古主義なのか?いや、違うね
何度でも繰り返されるResurrection
007は007である限り何度でも復活を遂げる


話を前に進めるための建前上のお話がまったくややこしくないため、はっきりと打ち出されたテーマを我々が簡単に受け入れられる
自分と向き合う物語、その道中が豪華
イスタンブールでのワイルドなチェイス、様々な意味で文字通り置いていかれた男がThis is my dutyと言わんばかりに舞い戻り、情けかそれともムチか、現場復帰を許される
まさに自分よりも時代に乗ったガジェットを携え、最新鋭なビジュアルの上海でなんともロマンチックで危険な視線のぶつかり合いがシビれる
絢爛豪華なマカオでいよいよ多くの死が待つ龍の口へと足を踏み入れ敵地に乗り込んだ後、ロンドンに戻りボンドスピリッツに乗り込み、そしていざスコットランドの広大な荒野で決闘

道を間違えたらこうなるであろうダークサイドが実態化して目の前に敵として現れる話、これほど面白い話はない
みんな大好きダークナイトもそうだよ
ドラマとしてストレートに盛り上げやすいし感情移入しやすい
この話にするだけで主人公の成長が約束されるから、好きに色々付け加えて深い話にできる
スカイフォールでは一見時代遅れなスパイ活動が持つ尊厳の再定義というテーマを同時に付け加えた
目に見える国や組織と戦うには必要のない存在かもしれないが、知らず知らずのうちに生まれた死角に存在する闇が自分を安全圏から引きずり出すかもしれない
その存在を主人公のダークサイドにしたことで見事に絡み合った

超内省的な物語なうえに正直狂ってると思えるほど左右対称な画ばかりなので、アクション映画扱いするのも違う気がしてきてしまう
ただそういう画づくりをすることで作品の目指す方向性はハッキリする
長〜く続いてきたシリーズを包括してしまうような今回のようなケースでは、芸術映画のような体裁をとることでこれでもかと内側と向き合う映画だということがハッキリした
クライマックス男たちが横並びでやってくるとことか恍惚としてしまったわ


最後は敵を自分のルーツへと迎え入れ、その地を破壊し尽くすことで改めて強固な自分を確立し、ロンドンに立つ
終わりの始まりではなく、始まりの終わり…それを語るために立ち返ることはすなわち揺るぎない自分の誇りを見つけることでもある
こんな陰湿な話でしかもアート映画、だけど大人気アクションシリーズ23作目
こんな稀有で恐ろしい映画そうないよ