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レベッカのTnTのレビュー・感想・評価

レベッカ(1940年製作の映画)
3.9
流石はヒッチコックというようなジリジリと進む展開とラストに畳み掛けるどんでん返し!ヒッチコックは映画を乗り物だと理解しているというか、身動きできない私たちを理解してエンターテイメントを作っている。

主人公が巻き込まれていくヒッチコックのサスペンスは、その主人公を通してしか観客に物事が伝えられないのだ。だからこそその主人公に感情を投影し、また主人公が危機的状況になると唯一の話者を失い、謎が解明されないのを観客は恐れるのだ。

物語のテンポもヒッチコックは自由自在に操っている気がする。最初の夫婦の出会いまではかなりテンポよく進むが、次第に今は亡き元妻のレベッカの存在が露になると物語はジリジリと焦らすように進んでいく。そしてそれらの事件が解決に近づくにつれてあらゆる真実がこれでもかとあふれかえる。そして最後の屋敷のシーンで私たち観客のカタルシスは成し遂げられるのだ。

登場人物がまたサブキャラ含めていかがわしさ満点の人物ばかり。主人公以外はほとんど信用できないのだ。常に薄ら笑いを浮かべているレベッカの従兄弟や、レベッカのメイドだった常に無表情のダンバースは特にキャラが立った存在だ。一方方向からしか見られないそれらのキャラはある意味ではステレオタイプ的に描かれる、つまり感情移入を阻害する。これがまた観客が主人公のみを信用するしかないというところに行き着かせるのかもしれない。彼らサブキャラの人間性はあくまで主人公の主観からしか描かれないのだ。また、既に死んだレベッカもこの映画には一度も姿を現さない。それもまた主人公が得た情報からしか私たち観客は想像するしかないからなのだ。

ヒッチコック映画は二度繰り返して観るためにはあまり作られていないのだと思う。まさにその映画館でしか体験できない緊張感を味わうために作られているのだ。
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