茶一郎

クロノスの茶一郎のレビュー・感想・評価

クロノス(1992年製作の映画)
3.9
【短】アカデミー賞獲得により愛を貫けばどんなジャンルであろうと大衆の心をつかむ事ができると見事に証明した「メキシコのオタク番長」ギレルモ・デル・トロ監督の長編監督デビュー作。本作『クロノス』は、骨董屋の老主人ヘススが機械仕掛けの虫「クロノス」に刺された事で吸血鬼になってしまうという恐ろしい物語です。
 まず、クリーチャー、歯車、虫、少女とクリーチャーとの出会いと、後の監督作に一貫したモチーフがデビュー作から登場しているという点はファンにはたまりません。吸血鬼化のきっかけが機械の虫に刺されるという奇抜なアイディアに加え、吸血鬼モノにも関わらず「吸血描写」が一切、無いというのも奇妙な作品であります。
 老体がみるみる活性していく過程は、『ザ・フライ』を筆頭とするクローネンバーグ作品のようで鮮烈。モンスター・ホラー映画ですが、人間賛歌として終着するラストは、どこか感動的な余韻を残します。
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